【後編】入社3年目社員の本音「会社に500万円も損害をかけてしまったかも…どうしよう!」エステー・池田咲さん(2017.12.03)

※この記事の内容は@DIMEで2017.12.3に掲載されたものを転載したものです
■あなたの知らない若手社員のホンネ
~エステー株式会社 池田咲さん(26才、入社3年目)~

前編はこちら

「20代の部下の考えていることは、さっぱりわからん」そんな上司の声を耳にするが、20代の社員は何を考えているのだろうか。また若い世代にとっても、同世代がどんな仕事をしているのか知りたい。入社3~5年の社員の話にじっくりと耳を傾け、彼らの本音を紹介するのがこの企画である。

第三回目はエステー、営業部門営業戦略グループの池田咲さん(26才)、入社3年目の後編。

電飾を施したピカピカの販促物をカー用品店に展示したが、性格は基本的にネガティブを自認する池田さん。それが災いしたのか、辞表が頭をよぎる事態に追い込まれることに。

彼女が担当する『赤毛のアン』のミュージカルはエステーが15年間主催している。オーディションで子供達を受け入れ、夏に全国8カ所で公演を行い、お客さんを無料で招待する。公演の時は支店のセールス社員が手伝うが、より積極的にミュージカルに関わってほしいと、セールス社員の中で現場のリーダーを設けたいと提案するのだが…。

●倉庫の隅の小包

自分で言いだしたことですが、基本的に性格がネガティブですから、

「入社3年目の私が先輩社員にこんな提案したら、反感買いませんかねぇ。『ただでさえ忙しい時期に何言ってんだ!』みたいな感じで怒られませんか」みたいな愚痴をタラタラ言っていったんですよ。

「そもそも池田さんがリーダーを立てたいと発想した時のことを思い出しなさい!」と、上司に強い口調でたしなめられました。そこで初心を取り戻し、全国のセールス担当者に送る“連絡書”というお知らせに、『毎年のことなので、マンネリ化を防ぐために今年から公演を行う地域の支店で一人、リーダーを立ててもらいます』という内容を通知して。結果的にセールス担当者がより主体的に動いてくれて、プラスの方向になりましたが。

大きな失敗といえば、『赤毛のアン』のチケットを全国に配送する作業をした時。取引先等の500名ほどのお客様への配送作業が終わり、やれやれひと仕事済んだと思っていたんです。帰ろうとした時に、会社の倉庫の隅に小包があるのに気付きました。

あれ、なんだろう?何気なく小包を開いてみると、

えっ……、全身がこわばりました。小包には『関係者受付でチケットを引き換えてください』という、代理店から届いた取引先のお客様への注意書きの紙が、たくさん入っていた。私はその紙を封筒に入れずに配送してしまったんです。気づいたのが夜の7時ごろ、あわてて運送会社に問い合わせたら、「東京のデポにあります。明朝、全国配送します」と言われまして。

毎日、会社に来る運送会社のドライバーさんと顔見知りだったのが幸いした。ドライバーさんと連絡を取ることができて、「じゃ、僕がデポから持ち帰りますよ」という言葉を聞いた時は、地獄に仏とはまさにこのことだと思いましたね。翌日は朝6時に出社して、先輩にも手伝ってもらい、チケットに注意書きをホチキスで留めて封筒に入れ直して、事無きを得たのですが。

●池ちゃん、まっいろいろあったけど。

実は私、もっと大きな失敗をしているんです。『赤毛のアン』は量販店等に置かれた応募ハガキを投函し、抽選で当たった人をご招待する形なんです。私はそのハガキに『52円の切手をお貼りください』という添え書きを記して、全国に配布してしまった。ハガキは今年の6月から62円に値上がりする。キャンペーンは4月〜6月末で、私は誤った文章をハガキに記して何十万枚も印刷し、配ってしまったんです。

「刷り直すとデザイン費も含め、500万円はかかりますよ」ミスに気づき、あわてて発注した業者さんに問い合わせると、そんな返事が返ってきまして。私は会社に500万円も損害をかけてしまったのか……。

どうしよう……、責任を取って会社を辞めなければいけないという思いも頭をよぎって、パニック状態になった。ミスに気付いたのが朝の10時ごろで、思い悩んだ末に「実は…」と、上司に報告したのは夕方5時。

「うーん」、40代後半の上司はちょっと考えると、「6月1日から62円に変わりますというタグを付ければいいじゃないか」と。応募ハガキは25枚で1セットになっている。セットの頭に『ご注意!6月1日から62円に変更になります』という、添え書きのタグを付ける方法を上司は考えついたのです。タグがあれば大問題にならないし、500万円の損害も回避できる。そんな営業経験の豊富な上司の判断でした。

「わかりました!」私はパワーポイントでタグを作り業者に印刷してもらいまして。謝罪文を添え、営業担当者から各量販店の本部に配ってもらい、店舗に落としてもらったんです。

「まっ、いろいろあったけど、池ちゃんも頑張ったし」「千秋楽はご褒美で」

そんな話が上司の間であったのか、

「池ちゃん、『赤毛のアン』の千秋楽のオペレーション統括を担当してよ」と、大阪の千秋楽の朝礼の前に上司から言われまして。オペレーション統括は、ミュージカル運営の総監督のような役割で、通常は部長クラスが担うのですが、やるしかない。

「今日、オペレーション統括を担当する池田です!」40名ほどのスタッフの前で、そう言った時はざわつきましたね。いろいろなことがありましたが、千秋楽の幕が無事に下りた時は達成感がこみ上げてきました。

入社3年目でいろんなことを任されたのは、この会社の良さです。でも、それは私からすれば悪い点でもあって、任され過ぎで精神的にホントしんどかった(笑)。

取材・文/根岸康雄