【前編】入社5年目社員の本音「惣菜売り場でエビ天を売る難しさを学びました」イオンリテール・土田万葉さん(2018.03.28)

■あなたの知らない若手社員のホンネ~土田万葉さん(27才、入社5年目)~

20代の仕事へのモチベーションの理解、それは管理職にとって彼らとの良好な関係を築くための出発点でもある。若い人も同世代がどんな仕事に汗を流しているのか。興味のあるところに違いない。この企画は入社3~5年の社員の話にじっくりと耳を傾け、そのマインドを紹介する。

第16回目はイオンリテール株式会社 人事・総務本部 人事部採用グループ 土田万葉さん(27才)入社5年目だ。学生時代は硬式テニスの選手だった彼女。「スーパーは日常の生活に欠かすことができないお店なので、地域に貢献できるのではないか。社内にはいろんな職種がある。女性として働いていく上で、いろんな仕事にチャレンジできる」と、この会社に就職。最初の配属は惣菜売り場だった。

■エビ天の難しさを知った惣菜売り場

最初のお店は、仙台市青葉区にある仙台幸町店でした。このお店で印象に残っているのは、サラダの発注を間違えたこと。10個のところを100個とパソコンに打ち込み発注してしまった。翌日、100個のサラダが届く。

「ケタを間違えました。確認作業が漏れていました」大量のサラダを前に、びっくりする上司にそう報告すると、「次は何をしなければいけないか、自分で考えなさい」いささか厳しい口調で言われました。売れ残ったものは安価で購入し、持ち帰ればいいと思いがちですが、それはできません。売れ残りはすべて廃棄処分です。大量のサラダを廃棄処分にするのはもったいない。どうしたら売り切ることができるか。

惣菜売り場だけではなく、いろんな売り場にサラダを置かせてもらったんです。精肉売り場は昨今の健康ブームもあってか、サラダが売れました。「本日はサラダがお安くなっております」とか館内放送も流して、運よく完売しました。「よく売れたなぁ……」結果的に上司を2回びっくりさせることができたのですが。

お惣菜売り場がすごいのは、揚げ物、焼き物、炒め物、お寿司にお弁当等々、全部で50種類ぐらいの商品を自分たちで作るところです。誰でも作れるというものではなく、社内資格制度というのがあり、調理のための試験があります。私もそれを受けました。中でもてんぷらは衣のつけ方や揚げる時間等、意外と技術が必要で大変でした。購買意欲をそそるためには見た目が美しくなければいけません。海老天ならシャチホコのように、尾っぽがせり上がるように作ります。

スーパーの店舗は私のような社員は少数で、売り場は大部分、パートさんやアルバイトさんが切り盛りしています。調理も達人のパートさんがいて、例えばコロッケやカツ丼や、その他諸々のおかずのレシピが完璧に頭に入っていて手際がいい。通常10個作るのに30分かかるお弁当を15分で製造できる人がいたり。マグロやサーモン等の寿司ネタを素早く、同じサイズでずっと切り続けられるパートさんがいたり。

■復興への団結心

パートさんは私のお母さん世代が多い。私は学生時代体育会系でしたから、礼儀とお礼の言葉は否応なく身についていました。それが功を奏したのか、パートさんとの人間関係は順調でした。「最近の若い人は何を考えているの?」という感じで芸能人の話やお子さん、お孫さんのことで盛り上がり、仲のいいパートさんは「マヨ」と名前で呼んでくれて。

仙台幸町店は1年で異動になりましたが、パートさんが開いてくれた送別会では、「もう少し一緒に働けると思っていたけどね」という言葉と、私の好きなスキマスイッチの曲が入ったDVDをいただきました。

次の異動先は東日本大震災の爪痕が残る宮城県多賀城店。社員を含めて20名ぐらいの規模の小さな店舗でした。私は大変な思いをされた震災のことには、触れてはいけないと思い込んでいたのです。

ところが、「震災の時はちょうど揚げ物をやっていた時で、油がはねて怖かったわ」

「津波が来て一階が水没して、屋上に避難して、2階の寝具売り場から布団を運んで一晩過ごしたの」「水がだいぶ引いた売り場から、缶詰とか加工食品を取ってきて食べたのよ」とか。普段の避難訓練が生きて、お客さんをスムーズに誘導でき、犠牲者は一人もいなかったとか。

パートさんから積極的に、震災の時の話を聞かせてくれまして。その口調はまったく暗くない。皆さん、すごく明るいんですよ。被災されて困っている人たちがいる。震災からすぐにテントを張って営業を始めたという話も聞きました。パートさんたちの明るさには、みんなで立ち上がって復興していこうという団結心のような強いものを感じました。

多賀城店でも惣菜売り場で人間関係に悩むこともなく、楽しく働けたのですが、実は私の中で会社を辞めたいという思いもくすぶっていたのです。

会社を辞めたい……土田さんの中でくすぶっていたそんな思いが、人事への異動を希望する遠因になっていくのである。その詳細は後半で。

取材・文/根岸康雄