【前編】入社5年目社員の本音「先頭に立って行かなければ、と戸惑い泣きました」はとバス・岩崎里紗さん(2018.01.24)

■あなたの知らない若手社員のホンネ~はとバス・岩崎里紗さん(27才、入社5年目)~

中間管理職にとって、20代の部下との良好なコミュニケーションは必須事項だ。20代の社員の秘めたマインドとは?また若い世代にとって、同世代がどんな仕事をしているのか、興味のあるところだろう。この企画は入社3~5年の社員の話にじっくりと耳を傾け本音に迫る。

第9回目、株式会社はとバス、観光バス事業本部 営業企画部 営業企画課の入社5年目、岩崎里紗さん(27才)だ。

●はとバスの代名詞のような部署

小学校の時の合唱団で、大きな会場のステージで歌を歌い、お客さんが楽しそうにしている顔を見て、将来は人を楽しくさせる仕事に就きたいと思いました。「満足と感動をいただける企業」それがこの会社のスローガンですから。

研修を経て最初の配属が定期観光部。東京観光といえば、はとバス。路線バスのように毎日出発する定期観光バスを支えているのが定期観光部です。はとバスの代名詞みたいな部署に配属されたわけです。

会社のバスをいかにうまく活用するか、それが私の仕事でした。3才ほど年上の女性の先輩と二人で仕事をこなしましたが、過去の予約状況照らし合わせて。例えば、繁忙期のこの時期の浅草観光や東京スカイツリー等のコースは、2号車を出せば満席になるだろうと予測を立てて、バスを手配する。同時に食事場所に電話を入れ、「2号車を出したいんですけど、どうですか?」「昼の12時は無理ですが、午後1時半からでしたら食事ができます」「わかりました。2号車は先に観光スポットを見学してから食事場所に入ります」というように調整をする。

バスを仕入れ食事場所を手配し確認したら、ガイドさんやドライバーさんに注意事項を伝達するのですが、「ここの駐車場はこの番号で取ってありますから、ここに入ってください」「2号車の食事場所は店舗が違うから間違えないでね」「3号車と4号車は食事場所が違って……」等々、紙に書いてのやり取りが多いんです。

ゴールデンウィークの繁忙期のピークには、会社のある135輌ほどのバスのうち、120輌ぐらい定期観光部が使います。つまり120台分のバスの割り振りの調整と、食事場所の手配、そして確認をしなくてはいけない。

バスの台数の確定は5日前。どのコースにどれくらい人が入るか、予測を立て数字を見極める。ある時の繁忙期、六本木ヒルズや浅草観光とかを含むベーシックなコースが、1台しか予約で埋まってなかった。でも過去の予約状況を見ると人気がある。「よし!」と、私は思い切って3号車まで仕入れたんです。5日後、はとバスが営業所を満車で出発した時はホッとしました。

また、手違いで食事の用意されていなかったなんて事故を起こしたら大変です。築地のコースで一度あった例ですが、1号車はお寿司屋さんの本店、2号車は支店、3号車は別の食事場所とそれぞれ違っていた。ところが3号車のガイドさんから、「お店が閉まっています」と連絡が入ったんです。日曜日だったので、先方の担当さんにも連絡が取れない。そこでお寿司屋さんの本店に連絡を取りまして。急きょ3号車のお客様には築地を散策してもらい、1号車のお客様が食べ終わった後に本店に入ってもらって、なんとか大事に至らずにすみました。

●『注意!』と書かれた一枚の紙

一緒に手配の仕事をしていた3歳ほど年上の先輩の女性を私は尊敬しています。入社してしばらくは先輩が率先し仕事をこなし、私はそれについていくという感じだったんです。例えば、バスは1台44人乗りですがある時、私の担当したコースで40人分しか食事場所の手配ができなかった。ですから、コース参加の定員数を40名としておかなければいけなかったのに、応募人数が44名になっていて。それも先輩が気付いて、

「満席になったらどうするの? 4名のお客様に食事が行き届かないじゃない」と、指摘され「すみません、気をつけます」といった具合でした。

ところが入社から1年半ほど経たある日、『注意!』と書かれた一枚の紙を先輩から手渡されたんです。そこには、

『これからあなたは、今まで以上に考える人にならなければいけないのだから、そこを意識して仕事に励んでください』という内容が書かれていた。先輩が異動になったんです。

どうしよう……先輩が異動になった寂しさと、これから私が先頭になって考え、仕事を進めていかなければならない戸惑いとで、思わず泣きました。

代わりに別の部署から定期観光部に異動してきた先輩は、バスを割り振る調整とか、食事場所の手配とかの仕事経験がない。今度は私が先輩に対して仕事を教える立場で、いったい何をどう教えていいのか。しかも先輩の異動の時期が秋の繁忙期と重なって、ほとんど一人でバスの仕入れや、お客様の食事場所の手配をしなければならない。振り返るとあの時期が一番悩みました。

仕事はシフト制で土日に関係なく、出社する。繁忙期のこの時期、岩崎さんの残業時間に友達は驚いたという。だが、間違いが許されないポジションでの悪戦苦闘が、岩崎里紗さんの成長を促していくのだ。

取材・文/根岸康雄

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