【後編】入社4年目社員の本音「楽しいばかりじゃ成長しない。しんどいと思うところに身を置きたい」ジョンソン&ジョンソン・濱津薫さん(2018.06.11)

あなたの知らない若手社員のホンネ~ジョンソン&ジョンソン/濱津薫さん(27才、入社4年目)~

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20代社員の仕事へのモチベーションを理解することこそ、職場で良好な関係を築くための一丁目一番地。この企画は入社3~5年の社員の話にじっくりと耳を傾け、そのマインドを紹介する。外資系企業のマーケティングを担う濱津さんは日々、どんな仕事を担っているのか、管理職のみならず、同世代の若い人も興味を抱くところだろう。

シリーズ第23回目はジョンソン&ジョンソン マーケティング本部 ビューティージョンソンズリード アソシエイトブランドマネジャー 濱津薫さん(27才)入社4年目。

2年間の営業職を経て祈願のマーケティングの部署に異動になった濱津さん。当初は数字の分析の仕事で上司の叱責もあったが、それも肥やしにして保湿性に優れたニュートロジーナのボディケアや、ジョンソンボディケアのマーケティングを担っていく。2016年のベビーオイルを配合したボディケアでは、時間がないというスタッフを説得し、ベビーオイルを強調したシュリンクボトルを実現。さて、2017年のボディケアのマーケティングはーー。

■新しいユーザーを獲得するための秘策

『ジョンソンボディケア』(以下・ボディケア)は20代の女性に人気のあるブランドで、2007年発売です。それまでボディのケア商品は保湿のみを強調するものばかりだったのですが、このブランドは保湿だけでなく、リラックスを演出する香りを楽しんだり。自分を慈しむひと時と共にあるボディケアを謳い、それが受け入れられヒットした製品です。

発売から10年を経て保湿剤の商品の中では、一貫して売上げ上位を占めていますが、中だるみというか、イマイチニュース性のない状態が続いていました。この現状をなんとかしたいと。ドラッグストアの棚には毎年、保湿剤の新製品が並んでいます。保湿剤は競争率の高いカテゴリーで、売上げが取れているからといって、それに胡座をかいているわけにはいきません。マーケティングチームは会議を重ねました。

「私は若い人に、もっとボディケアをしてほしいんです」そんな思いは常に自分の中にありました。

「若い女性に人気のあるタレントをキャラクターに起用して、テレビCMを製作してみるのも一つだが」ミーティングでは、当然そんな話もありました。

「テレビCMも大事ですが、今の20代の女性はどちらかというとテレビよりも、SNSでの発信が有効です」今は若い女性がインスタグラムやツイッターを使いこなす時代です。SNSを駆使した発信では、何が最も有効的なのか、マーケティングを担う人間ならトレンドになっている、ある手法を思い浮かべます。

「コラボか……」

ミネラルウォーターの会社がフランス出身のファッションリーダーの起業家と、コラボレーションしたペットボトル。あるいはファストファッションの会社が、有名デザイナーブランドとコラボした服等が、SNSで話題になっている。

「それはいい手法だが、うちのボディケアにふさわしいコラボとなると……」

さて、コラボの相手に一番ふさわしいのは……、そこが最大のネックでした。私が提案したのは、

「ピーチ・ジョン」

ピーチ・ジョンは主に若い女性を対象にした、下着やパジャマ等を展開する会社です。ボディケア通常、下着を身につける寝る前のタイミングで使うもので、下着メーカーとは親和性が高い。

「コラボはいいが、相手のブランドが変わりすぎていると、既存のユーザーが付いてこられるかどうか……」

下着のメーカーとのコラボで、既存のユーザーが離れることを心配する声もありました。

「発売から10年間、うちのボディケアは日本で最も売れているボディローションの一つです。ずっと使ってくれているユーザーは決して離れません。このコラボで新しいお客様を獲得していきましょう」

■楽しいばかりじゃ成長しない

ピーチ・ジョンにとっても、若い女性がターゲットという点では同じ方向です。ドラッグストアは先方にとって新しいプラットホームなので、人気のあるボディケアとのコラボは、自社の認知度を高めることにつながるはずです。

「私たちは若い女性たちに、もっとボディケアを知ってもらいたい。それと同時に、ピーチ・ジョンが対象とする20~30代への認知を幅広く獲得していきましょう」

先方とのコラボは、そんな話し合いの中で決まりました。「パッケージのデザインで、コラボをしたい」というのは、こちらからの提案です。コンセプトは女の子がワクワクするデザイン。「寝る前にボディケアを使った若い女性がインスタグラムやツイッターに載せたくなる、そんな可愛いボトルデザインにしたいですね」「SNSに載った時にみんなから羨ましがられるようなものにしたいね」と、話は盛り上がりました。

ボトルの形は同じ、ピーチ・ジョンデザインはラベンダー等、女の子が手に取りやすい3種類にしました。さて、キャンペーンはどのように展開していくか。

ツイッター上でキャンペーンを展開しよう。リツイートしてくれた中から、ピーチ・ジョンのパジャマと、ボディケアのボトルを抽選でプレゼントする企画をはじめました。いろんな人に拡散してもらうための費用はあえて使わず、自発的に参加をしてくれる人を募ったのです。

ボディケアに関して、長年大きなニュースニュースがなかったところに、他ブランドとのコラボは会社にとっても私にとっても、チャレンジでした。果たして予想した通りうまくいくのか。

私からはピーチ・ジョンの担当者から頂いた言葉を紹介します。

「当初予定していたよりも、キャンペーンへの参加率が多くてびっくりしました」。分析の結果、通常のコラボと比べて、約8倍のアクセス数があったそうです。

「楽しいばかりじゃ成長しない。ちょっとしんどいなと思うところに身を置くと、伸びるね。適度にしんどい、そんなストレッチが成長には必要だ」それは、マーケティングの部署に配属された当初の上司の言葉です。今、なるほどなと実感しています。

学生の頃は新しい価値や製品を世の中に発表して、消費者の行動を変えていくのがマーケティングの仕事だと思っていたのですが。それは一人ではできない。ユーザーへの伝え方、PRのやり方、デジタルの発信の仕方、ファイナンシャルの見解も含め、チームでマネイジメントしていく。マーケティングの仕事とはそういうものだと、これも実感させられました。

さて、ボディケアに関して、これからどんなマーケティングを展開していくのか、詳しいことはまだ言えませんが……。こうして20代でブランド戦略やキャンペーンのプランニングの仕事に携えるのは、外資系企業ならではの恵まれた点ですね。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama