【前編】入社3年目社員の本音「ドローン開発の夢が捨てきれず日本に来ました」ブルーイノベーション・マジョディ チャアベンさん(2018.06.13)

あなたの知らない若手社員のホンネ~ブルーイノベーション/マジョディ チャアベンさん(27才、入社3年目)~

20代の部下のモチベーションを理解することは中間管理職にとって非常に重要だ。とは言っても、今回登場するのはチェニジア人。扱うのはドローンである。

彼が勤務するブルーイノベーション株式会社は、無人航空機の安全飛行管理システムの開発や、無人航空機でのソリューション・研究開発等を業務とする。今回はシステム開発部 アプリケーション開発チームで半年間のインターンシップを含め、入社3年目となるマジョディ チャアベンさん(27才)。

チェニジアは北アフリカに位置する共和制国家。西にアルジェリア、南東にリビアと国境を接し、地中海に面する。地中海の対岸はイタリア。2011年、中東、北アフリカで広がった「アラブの春」といわれる政変で、最初に選挙が行われた国でもある。マジョディさんはチェニジアの首都、チェニス出身。通訳は同僚で日本語ができるポーランド人である。

■ドローンを飛ばすために日本へ

父はコンサルタントの会社を経営しています。子供の頃は任天堂のゲームボーイが大好きでした。このゲームはどこの国で開発されたのだろうか。

おう、ニッポン。そこで日本に興味を持ち、ワンピース、デスノート、ナルト等々、アニメにものめり込みました。チェニジアの大学ではITの勉強に集中して。自分にとって楽しいものを開発したい。それがドローンだったのです。ITの技術を使いドローンは今後、ますます発展していく。ところが、チェニジアは軍事の関係で、ドローンを飛ばすことができません。日本に行きたい、ドローンの仕事がしたい。この二つをキーワードにインターンシップを斡旋するウェブサイトを通して、今の会社を見つけたのです。

「遠い国からの申込でしたが、ドローンに興味を持つITエンジニアはそういません。渡航費は折半、まずは半年間のインターンシップで。現在、40名ほどの社員のうち、エンジニアに関しては6割が外国人です」(広報担当者)

日本に来てまず感動したのは秋葉原です。あんなにたくさんのゲームセンターと、最新の格闘ゲームが集中しているなんて、僕にとっては完璧なパラダイスでした。今、スカイプで11才の弟に秋葉原のゲーセンの画像を送っていますが、弟も日本の虜になって、今すぐにでもこっちに来たいと言っている。

秋葉原の近くに借りたシェアハウスも新鮮でした。チェニジアにはシェアハウスは存在しません。シェアハウスに住んでいる日本人に、日本の文化を教わりました。インスタントラーメンに生卵を入れ少し煮込むと美味しいとか、「ちょっと待ってください」「すみません」「どうも」この3つの日本語の使い方も教わりました。

驚いたことといえば、日本は世界的にも優れた国と学校で教わりました。当然、全員が英語を話せるものと思っていた。ところが英語を話す人は少なくて、社内の会話はボティランゲージが多かったのです。「ちょっと待ってください」と日本語で言いつつ、おかげさまで身振り手振りや表情等、表現力のパフォーマンスの能力が高まりました。

エンジニアの中では日本語の他に、英語にフランス語、アラビア語、チェニジア語が飛び交っています。でもランチを同僚と食べに行く時は、あまり言葉に困らない。ラーメン、寿司、てんぷら、カツ丼等々、日本の料理は独特の名前が付いているものが多い。世界共通の言葉が多いITとよく似ています。ただ唐揚げは国によっていろんな言い方があります。フライドチキンは知っていますね、フランス語ではプリパニ、チェニジアではジェイジモクリと言います。
ちなみに、今はラマダンの時期で、イスラム教徒の僕は6月15日まで、日が沈むまで好物のジェイジモクリは食べられません。

■なんでも時間通りにやる日本人の働き方

インターンシップの時の仕事は、「SORAPASS」(以下・ソラパス)の開発でした。ドローンを使用できるところとそうでないところが、航空法で決められていて、ソラパスはそれが一目瞭然にわかるアプリです。さらにそのアプリを使うと、飛行申請のドキュメントも、オンラインで作ることができます。

僕はソラパスのアプリの開発の一部を担いました。飛ばしてはいけない地域を地図上に明記するのに、新しい機能を追加し、それを実行するボタンの機能を配置して。ボタンを押したら地図がズームしますと。ベースになった地図データは日本製だったので、表記はすべて日本語で僕は混乱しました。一番の失敗はズーム機能を設定する時に、プラスを押すとズームアウトに、マイナスを押すとズームインに、表示とは逆の設定してしまった。

日本人と働くのはもちろん、人生で初めてのことです。「日本人はなんでも時間通りにやる」と、チェニジアの友人に言われましたが、本当にその通りでした。チェニジアでは会議に30分ほど遅れてくるのはフツーでしたが、日本でそれは許されない。

日本人は仕事上で「やる」と言ったことは、どんなに残業しようが必ず守る。それもチェニジア人とは違うところでした。

会議には時間通り行く、締切り前に作業を終える、そんな日本流の仕事のやり方が身につくと、チェニジア流よりも効率的に思えて。インターンシップが終わり、チェニジアに帰国しましたが、再び渡航して正社員として仕事に取り組みたいと言う思いが募りました。

再来日したマジョディ チャアベンさんの日本奮闘記、ドローン開発の主要なエンジニアとして、仕事を担っていく話は後編で。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama