【リーダーはつらいよ・前編】「社員の7割が女性、そんな組織の飲み込まれないためには嫌われキャラに徹する」クレディセゾン・照山友隆さん

上からの指示に応え、部下の働きやすい環境に気を配り部下を育てて、もちろん数字の目標もシビアに頭に入れて……。中間管理職は気安く愚痴をこぼすのも難しい。世の中の課長たちは働く現場で何を考え、どんな術を講じているのか。その語りを紹介する。

シリーズ第18回、株式会社クレディセゾン デジタルイノベーション事業部 ポイントビジネス部課長 照山友隆さん(34)。クレディセゾンカードの会員は約2700万人。永久不滅ポイントを謳うセゾンカードだが、会員がポイントを更に使いやすくするため、照山さんたちのグループは、「STOREE SAISON」(以下・ストーリーセゾン)というネット通販サイトを立ち上げた。後発のeコマースだが、他にない特徴を出すためにどうするか。物語はクレジット会社が利益を捻出する仕組みの説明からはじまる。

嫌われキャラでもいいのだ

「形のないものを商売にすることに興味があったんです」と、照山は言う。自分の発想と営業能力が直接、売上げの数字に反映するところが、彼にとって魅力だった。

クレジットカード会社のビジネスはユーザーのショッピングのリボ払いと、キャッシング手数料、加盟店手数料が主な収益だ。加盟店手数料の中にVISA、MasterCard、AMEX等、セゾンカードと提携する国際ブランドでショッピングした際の手数料も含まれる。ユーザーにはカードで購入したものに応じて、付加価値のポイントが提供される。

照山は関西支社で営業を4年経験。クレジット会社の営業は“カードの会員を増やす”“使える店や場所を増やす”主に二つだが、関西支社で彼はその両方を経験した。次に東関東支社でマネージャー職に就き、初めて10名の部下を持った。「支店長に“僕ならこのくらいの数字は上げられます”と、自分から係長に志願したんです」

ちなみにクレジット会社の各ショップは女性が多く、社員の約70%は女性だ。照山の部下もほとんど女性で、しかも年上だった。彼は「はっきりいいます。正直、僕は生意気です」と、最初に自分をブランディング化するようにキャラを明確に出した。それが女性の組織に飲み込まれないための照山の手法だ。嫌われキャラでもいいのだ。

EC事業、明らかに後発組だ

担当した大型ショピングモールでは、カードを使ってもらえるよう、ディベロッパーやモール内のテナントとより密接な関係を築く。例えばカードを使えば使うほど、ポイントが貯まる。カードを利用することでどんなメリットが得られるのか。テナントの店員さんの理解が深まり、店員さんからお客に説明してもらえばより伝わる。将来的な店舗売上げを意識して、きちんとお客に説明ができているのか。

カードを使ってもらうためのディベロッパーと協力して行なうプロモーションは、お客が自ら会員になりたくなるような流れになっているのか。

「そんなこと、やっていますよ」
「本当ですか? ここの数字ができてない理由は何ですか? 教えてください。お願いします」

自分をブランディング化しアピールする一方で、一対一の時は言いわけもきちんと聞いてフォローする接し方が、女性たちとうまくやるためには重要だと、彼は感じている。

各支店を管轄する営業推進部を経て、現在の部署に就いたのは昨年4月。「照山、ポイントの出口戦略を考えてくれ。eコマース化して、もっと手軽にポイントを使えるよう魅力あるものにしてほしい」それが上司の業務命令だった。

セゾンカードの未使用のポイントは1050億円分に達している。ギフトカードや家電製品、ゲーム機等、サイト上でポイントに見合う商品と交換する仕組みを、もっと使い勝手が良く魅力あるものにするのが照山の部署の仕事である。彼の部下は9名。女性はもちろん、即戦力になる中途採用者も多い。どのようにeコマースを展開するのか。

「巨大でメジャーな通販サイトはいくつもあります。EC事業をはじめるとして我々は明らかに後発組ですよ」「他と同じことをやっても勝ち目はないな」照山を中心に部署のメンバーたちの話し合いは続いた。

量ではなく質で攻める

「我々の強みは2700万人の会員と、1050億円のポイントの残高だ」
「ポイントを使うためにサイトを訪れるお客さんに、他の通販サイトにない価値を提供しようじゃないか」

さて、後発組としては、通販サイトをどんなブランディングにするか。

「例えば大手通販サイトで肉を検索すると、100万店ぐらいヒットします。その中にはいいものもあれば、そうでないものもある。100万店の中から、自分の気に入ったものをどう探すのか」
「価値がバラバラ、そこが既存の大手通販サイトの課題ですね」

セゾンの会員のポイント交換の履歴を見ると、ちょっといい肉やお米やお酒等の人気が高い。

「検索するといいものしか出てこない。そんなサイトにしよう」
「なぜいいのか、説得力を持たせたいですね」
「作り手の想いをちゃんと丁寧に説明しているサイトって、あるようでないです」
「誰がどんな目的で作ったのか。商品にストーリーを付けようじゃないか。ストーリーを見れば一層、商品が好きになる、そんなサイクルをサイトの中に作り上げよう」

ブランディングの輪郭は決まった。量ではなく質で攻める。とにかくいいものだ。

さて具体的なサイトの内容はどうするか。「ストーリーセゾン」の課題とそれを解決する道のりは、明日公開の後編で詳しく。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama