あなたの知らない若手社員のホンネ~株式会社Nextremer/長屋晃司さん(30才、入社3年目)~
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「どうも最近の若い連中ときたら……」そんな不満が脳裏を過る管理職には、彼らを見直しきっかけとして。また若手は同世代の奮闘ぶりを知る機会として、「若手社員の本音」は、バラエティーに富んだ職種に就く若手を紹介している。
今回はAIのベンチャー企業に勤務する公認会計士。彼は3大国家試験といわれるうちのひとつ、公認会計士の資格を取得し、社員30数人のベンチャーに転職した。
シリーズ49回、株式会社Nextremer(ネクストリーマー)経営管理部 公認会計士 長屋晃司さん(30・入社2年目)。Nextremerは、向井永浩CEO(41)が2012年に設立。AIを活用した対話システムの研究開発・サービスを主な事業にしてから会社は急速に成長。10名ほどだった従業員はここ数年で30数名に。長屋さんも、この会社の将来性に期待をして転職。経理、財務、総務を担当し、会社の基盤作りに集中。入社1年後には総額4億7000万円の資金調達の実施に立ち会った。
株主総会で大失敗
調達した4億7000万円で、プロダクトの開発に力を入れ、きちんと売れるものに仕上げる。営業をかけて企業に使ってもらい、事業として成功して株主に応えていかなければいけません。
僕が携わる経営管理部は誤りを極力なくしていく部署なので、失敗談と言われると言葉に詰まるところがあるのですが。
大失敗は資金調達をした後のことでした。
まずは投資をしてくれた新しい株主を招集して、取締役会や株主総会を運営していく。株主総会を開くためには、きちんとした段取りを踏む必要があります。決算を終え業績の監査をすませて、株主に招集通知を出す。うちの監査役が書類を見なければいけないし、招集通知を株主に出してから株主総会まで一定期間、時間を置かなければいけないと法律で決まっているんです。
ところが、うちの監査役が僕の作成したスケジュールを見た段階で、「これ、おかしくないか?」と。段取りがうまくいっていなかった。株主総会の日程に無理があったんです。結局、株主総会の日程をズラさなければいけなくなってしまった。
「今回は限られた株主だけだったからよかったが、会社が発展し株主が増えた時に今回のようなミスを起こすと、大問題になるぞ」上司にはそう苦言を呈せられました。
決算から株主総会まで、監査の期間も含めて、どのくらいの期間が必要なのか。わからなければ関係者への確認が必要で、コミュケーションが足りなかったんです。これ以外にも僕のコミュニケーション不足は、いささか反省する点がありまして……。
コミュニケーションに関して“消耗型”と“増幅型”
資金調達と並行して、社内の業務改善や制度作りもテーマでした。リスクを減らし業務をもっと効率化したい。契約書も請求書も経営管理部に投げて、僕らが書類を作ったり整理したり、確認したりするのではなくて。例えば各部署から請求書が回ってきた時、日付や金額等に間違いはないのか。また、この数字については何に使われ、それがなぜ必要だったのか。確認のポイントを作り、チェックの機能を統制して、効率的にまわるよう業務の流れを“見える化”したい。
経営陣に会社の現状についての数字を、根拠をもとに伝えるのは、経営管理部の責任です。数字の根拠をもっと詳しく示し改善策も提案できて、経営陣がベストな意思決定をくだせる、そんな支援をしていきたい。しかし――
「リーダーには“消耗型”と“増幅型”の2種類がいる。長屋は“消耗型のリーダー”になっているな」それも上司の言葉です。「例えば『自分だけでやろうとせずに、これに関してはあの人が知識を持っているから、聞いてみなよ』とか、今いるメンバーを組み合わせて、チームとしてできることを増やしていく、そこを意識してコミュニケーションをとったほうがいいよ」と。
自分の持つ知識を意識するのと同時に、まず個人の力を重視するのは会計士という資格を持つ人間の特徴なのかもしれません。でもそこに偏りすぎると、チームワークを生かすことがおろそかになってしまうわけで。
今、社内でおしゃべりができる環境作りがいささか足りていない。僕は数字を把握する部署を統括し、会社の現状を知る立場です。営業にもエンジニアに対しても、もっと躊躇なく意見を言い合える状態が作れたら、チームワークの発揮につながっていく。開発部門の人間と、進行中の研究について気軽に話ができて、それを気軽に営業サイドに伝えることができたら、ビジネスは進展します。
音声認識システムは自動運転等に搭載されたり、今後ニーズは益々高まっていきます。会社の成長に携わり自分も成長したいと、僕はベンチャー企業に転職をしたのですから。そのためには、僕のコミュニケーション不足が一つの問題で、少しずつでも解消したいと。
最初にもお話しましたが、僕は人付き合いが嫌いなわけではないんです。ただ、性格がマジメですから。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama