【前編】入社5年目社員の本音「実は間違いをものすごく気にするタイプです」ウェザーマップ・多胡安那さん(2018.06.26)

あなたの知らない若手社員のホンネ~ウェザーマップ 気象予報士/多胡安那さん、契約5年目)~

部下のモチベーションを理解することは中間管理職にとって非常に重要。とは言っても、今回は気象予報会社に所属する契約5年目の気象予報士である。聞き慣れた職業ではあるが、気象予報士の仕事の様子、そして辛さを含め紹介する。

シリーズ第26回目は、気象予報等を業務とする株式会社ウェザーマップに所属する多胡安那さん。会社と契約して5年目の気象予報士だ。

帰国子女の多胡さん、2005年3月に聖心女子大文学部卒後、気象予報士の森田正光さんが会長を務めるウェザーマップに所属するまで、紆余曲折を経ている。学生時代に有名女性キャスターの講演を聞き、自分で調べたものを形にして、多くの人に見てもらうマスコミの仕事に興味を持つ。大手金融機関に内定したがそれを断って――。

■お天気キャスターの舞台裏

なぜ天気の道に進んだのか。例えばエレベーターに乗り合わせたときに、「今日は暑いですね」「寒いですね」とか、まず天気の話をします。天気に詳しければ誰とでも話ができます。天気のことに詳しくてマスコミの仕事をするなら、お天気キャスターや気象予報士だなと。

内定を辞退して家にいた時に、古い女性雑誌に私が挟んでおいた、気象情報の配信等を担う株式会社ウェザーニューズの社員募集の広告を見つけまして。募集の締め切りは過ぎていましたが、面接を受けたら採用が決まったんです。主に気象予報チームが出した予報のデータをもとに、全国各地のテレビ局に向けての天気予報の原稿を書きました。例えば宮城テレビなら「仙台は午後から晴れてくるでしょう。風が強くなるので強風高波に注意してください」という感じです。天気の画面に合わせてアナウンサーが話す原稿を、多い日は60枚ぐらい書きました。

早起きは私の特技の一つで、朝4時の始業はいいのですが、勤務地が千葉の幕張と遠くて、泊まりもあり体力的にしんどい。辞めようかと思っていた時期にたまたま上司が、大阪の読売テレビに一度遊びに行かないかと。で、情報番組のプロデューサーに会って名刺交換し、「ウェザーニューズをもうすぐ辞めるんです」と言ったら、「来月から僕と一緒に働かない?」と。まだ、気象予報士の資格も取得してなかったのに、いきなりズームインスーパーという番組の近畿地域のお天気キャスターに抜擢されたんです。

本番中は緊張しました。最初は赤いランプが点灯しているカメラを見て喋らないと、目線が違うところに向いてしまうと注意されたり。

番組では“尺を合わせる”と言って、持ち時間内に収めることが求められます。スタッフさんがタイムキーパーさんから聞いた時間を『残り1分』『残り30秒』とか出してくる。私は土壇場で尺がかわっても、しゃべりながら指定された時間にピタリと合わせて、お天気コーナーを終わることができました。尺を合わせるのが得意だったんです。

間違えたのは、「6月は青空スタートとなりそうです」というところを、「6月は青空ス……」で切れた。この1回だけでした。あの時はADさんのカウントを書いたものが見えなくて。

同時に、私こう見えても実は性格が暗いというか、考え方がネガティブなところがありまして…。例えば本番中に、「昨日よりも気温が高い」というべきところを、「低い」と言ってしまったり、言い間違えとか数字の読み間違えとか、ものすごく気にするタイプで。夢の中にまでその失敗したことが出てくるようなところがあります。

■お天気キャスターから営業へ

番組の改編まで、1年間お天気キャスターを担当しました。翌年は同じ読売テレビで「情報ライブ ミヤネ屋」の番組の中でアナウンサーが読む天気の原稿を書いて。2年間大阪にいて東京に戻ったんです。私はテレビの仕事から離れたくなかったので、読売テレビ系列の日本テレビで天気の仕事をすることを考え、担当の人に「お天気班に空きがありますか?」と尋ねたましたら、「今、人がいっぱいで」と。

「あなた愛想がいいから営業部に向いているかもね」と。今度は天気と離れて、日本テレビの営業部で働くことになって。広告代理店さんと電話でやり取りをしたり。2年半はふつうのOLのような勤務時間帯の仕事でした。結果的に原稿書きという裏方も、お天気キャスターとして華やかな舞台も経験して。テレビ局を支えるスポンサーとは何かという側面も垣間見ることができました。

日テレの夕方のニュースを中心に長年、お天気キャスターを担当する気象予報士の木原実さんとも、エレベーターの中で知り合いました。「一度でも帯番組でお天気をやっていたのなら、早く戻りなさい」「僕のオンエアの時に見に来なさい」等々、励ましの言葉をいただきまして。

その間、ウェザーマップの創業者で、お天気キャスターの森田正光さんが創立した「気象予報士講座クリア」にも通い、半年に1回の気象予報士の試験を何回か受験しました。合格者は受験者のおよそ5%と言われていますが、資格を取得できたのは2011年。当時はクリアの受講生で気象予報士を取得すると、クリアの登録制度を利用でき、オーディションや仕事の紹介に、つながる機会を得られました。私はズームインスーパーの時の録画も提出していた。するとある日、日テレの局内で声をかけられたんです。

「多胡さんだよね、キミの登録を見たよ。ズームインの録画も見た」それは今も私の上司である、ウェザーマップの日テレ営業担当の人でした。

「天気に戻る気あるの?」「できれば戻りたいです」そんな話をして数日後、電話をもらって、「4月からテレビ東京の出演の仕事があるんだけどやってみない?」と。

「えっ¡?」意外でした。驚きました。

そして、テレビ東京に出演した2013年の時点で、ウェザーマップと、契約することになったのです。

多胡さんはお天気キャスターとして再びテレビの表舞台に登場するチャンスを得た。だが、ネガティブところがある、間違いをものすごく気にするタイプと自認する性格からなのか、再び表舞台に立った彼女に波乱が待ち受けていた。詳しいことは後編で。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama