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中間管理職は部下との円滑な人間関係のために、20代の若手社員は同世代がどんな仕事に奮闘しているか、興味があるところであろう。この企画はバライティーに富んだ職種に従事する若手社員を紹介してきたが、今回は世界最大の家具量販店、イケアである。
シリーズ44回はイケア・ジャパン株式会社 IKEA新三郷勤務 チェックアウトサービスマネージャー 村上梨加さん(29)入社6年目だ。イケアはスウェーデンが発祥、欧州、北米、アジア、オセアニア等、世界各地に出店。スタイル別モデルルームをはじめ、レストラン、ビストロ、一時子供預かり所等も併設している。
公募制に手を挙げて、面接、承認、そして上司のサポートのもとにトレーニング期間を経て、リーダーやマネージャーに就くことができるシステムのイケア。村上さんは自ら挙手し、閉店後のレジの売上げを、本部で一括して精査する新システム導入のリーダーとなった。レジや会計エリアの経験がある村上さんは、スタッフの仕事の負担を軽減することにつながれば、素晴らしいことだと思っていたのだが――。
得意はハッピーな想像力
私はこれを導入できればすごいという、ハッピーなフローを想像することはできるんです。弱点は新システム導入に伴い、システムの不具合や人的な問題が生じるのではないかという、サッドなフローに関して、想像力が足りなかったといいますか。
その新システムはスウェーデンではうまく稼働していました。しかし、日本と外国では、タックスの仕組み等のお金の事情をはじめ、様々なシステムが異なります。外国と日本とのシステムの違いをいかにカバーするか。
新システム導入がうまくいくように、各店舗のレジや会計エリアを担当のマネージャーと、コミュニケションを取って仕事を進めたのですが。新システム導入のトレーニングの時間、準備する資料、トレーニングを受けるスタッフのリストアップ。これまで精査部門がやっていた業務一つが金銭管理に関わる書類の保管で、法律で定められた保管期間に関わる業務を、新システム導入後はどのようにしていくのかとか。各店舗に精査担当がいた時は、その日の売上げの結果を精査担当が抽出し、スタッフに情報を知らせていましたが、システムを導入した時、その作業を誰がやるのかとか。
「
あっ、村上さん、そういう意味だったんですか」
「村上さんは、その部分のことも含んで言っていたんですね」とか。
私は伝えたつもりでも、各店舗のマネージャーは違う受け取り方をしている。相手の認識を確認したつもりでも、そんな行き違いが何回かありました。私のサッドのフローの想定の足りなさと、伝え方の未熟さから、ギャップが生じたと反省することが多かった。
このプロジェクト専門に取り組んだのは私一人で。導入する日程は決まっているので、スウェーデンのプロジェクトリーダーと密にコンタクトを取り、すり合わせをしながら。一つの店舗で試験的に導入し、レジの売上金を本部で一括精査する新システムが、全店舗で稼働するのに3ヶ月間かかりました。
懲りることなく自ら再び責任ある立場に
もう一度同じことをやれと言われたら、結構ですというぐらい大変でした(笑)。でもーー
このプロジェクトの時は船橋市の本社に勤務をしていましたが、夫の仕事の関係で神戸の店舗で一年間働いてこちらに戻り、IKEA新三郷に転勤すると、今度はレジや会計のエリアを担当する、チェックアウトサービスのマネージャーの公募に手を挙げたんです。
売り場でレジ等の仕事だけに従事していると、視野が狭くなる気がして。来店したお客様、ビジターが実際に商品を買いカスタマー、顧客になる瞬間に携われるチェックアウトサービスのチームは、やりがいがありますし奥が深い。マネージャーとして今は26名のスタッフを束ねる立場です。
お客様をお迎えし、お見送りする気持ちで立ち振る舞うために、レジのスタッフのモチベーションを高めるにはどうしたらいいか、それが今の私の最大の課題です。
「お客様にはアイコンタクトをきちんととって、笑顔は大事だよね。お客様に好印象を持ってもらうことは、自分のやり甲斐にも繋がるし、すごいことなんだよ」とか、ハッピーなフローの想像力が得意な私としては、そんなキラキラしたことを伝えたいのです。でも、また、きれいごとを言っているよと、スタッフに見られているような気が時々して…。
私も土日はレジに入りますが、とにかく忙しいのです。特に5000円以上お買上げのお客様に、イケアのギフト券をプレゼントするキャンペーンの期間中はさらに忙しくて。その中でお客様へのアイコンタクトや笑顔や、感謝の気持ちを維持するには、人員を増やすことも考えなければなりません。
「今のチームのスタッフだけでは間に合いません」と上司に伝え、人を増やすことの承諾をもらい、退職した人を含めて期限付きで働いてくれる人を探したり。土日祝日が休みになる本社のスタッフにレジのサポートをお願いしたり。中にはレジに慣れない人もいますから、再教育が必要だったり、それはそれで大変ではあります。
まだまだこれからです
クレームをいただいた時は、できるだけタイムリーにスタッフに伝えます。「お客様が受け取った印象がすべてになってしまう。それをまず受け止めてほしい。なぜ、お客様とのギャップが生じたのか。一緒に考えてみよう」とか。私は見ての通り、迫力がありませんので(笑)、“何々しなさい”という伝え方をしても相手の心にズシンと届きません。
「どこが悪かったと思う?」「どうしたら、お客様が笑顔で帰ってくれると思う?」とか、スタッフが自分で考え、言葉を発してくれるような話し方が、私には合っているのかもしれない。
でもね、この会社はライフステージによって、仕事を決めることができます。夫の転勤に合わせ店舗を異動できますし、子育てがしやすいよう、販売や物流の部門に異動することも、シフト制を選ぶこともできます。社内には子育てをしている30代の女性社員もたくさんいます。私の直属の上司の部長も3人子供がいて、夫は海外に単身赴任している。
「マネージャーがワンマンショーをやる必要はない。自分がいなくてもチームがしっかりと機能する、それが素晴らしいマネージャーだよ」と、女性の上司にはアドバイスをもらっています。
まだまだこれからですよ。素晴らしいマネージャーを目指し、末長く勤めていきたいですね。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama