【後編】入社5年目社員の本音「気も強くなりましたが、粘り強くなりました(笑)」はとバス・岩崎里紗さん(2018.01.25)

■あなたの知らない若手社員のホンネ~はとバス・岩崎里紗さん(27才、入社5年目)~

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中間管理職にとって、20代の部下との良好なコミュニケーションは必須事項だ。20代の社員の秘めたマインドに迫るのがこの企画だ。また、若い世代にとっては同世代がどんな仕事をしているのかは興味のあるところだろう。入社3~5年の社員の話にじっくりと耳を傾ける。

第9回目、株式会社はとバス、観光バス事業本部 営業企画部 営業企画課の入社5年目、岩崎里紗さん(27才)だ。

最初の配属は定期観光部、東京見物の定期観光バスと食事場所の手配や仕入れを担当する、はとバスの要の部署の一つだった。入社1年半後、率先し仕事をこなしてくれた先輩の女性社員が配転。別の部署から異動した先輩は、定期観光部の仕事の経験がない。岩崎さんがほとんど一人でバスやツアー客の食事場所の仕入れや手配をした。先輩の立場にある人に仕事も教えなければならない。しかもそれらすべてが、秋の行楽シーズンの繁忙期と重なって――。

●「もう、何なの!」

繁忙期の私の残業を見れば、上司も仕事の大変さはわかっていたと思います。秋の行楽シーズンの繁忙期のピークには、バスを80〜90台出すこともあって。東京スカイツリーや東京タワー、墨田川下り、浅草観音と仲見世の散策等、人気スポットを組み込んだ定期観光ツアーは、一昨年、昨年の実績を元に2号車3号車と増発のバスを手配し、どう割り振るかを調整して。それぞれのバスの食事場所にも連絡をして確認をとります。「11時半からの枠では、1台分44名様しか対応できません」と、先方の食事場所に言われたら、別のお店を探すなり、時間をずらすなり考えなければなりません。

新規に開拓した食事場所は先方も慣れていないので、「2人席とか4人席とか、事前に伺ったお客様の希望に通りの席割りをよろしくお願いしますね」とか、念入りに確認をとります。ツアーの5日前にはバスの台数とを確定し、前日には手配した食事場所等の注意事項を、ガイドさんやドライバーさんに細かく伝えます。

交渉が大変だったスポットの一つが東京スカイツリーです。春のゴールデンウィークと秋の行楽シーズンは、できる限りスカイツリーのツアーを組みたいのに、開業して間がない当時は、今以上に人気スポットでした。

「はとバスさんのご依頼通り、チケットを用意することはできません」という回答ばかり。「3か月も前からお願いしているんですから、もう少し譲歩していただいてもいいんじゃないですかね」とか。電話口でのこちらの語調も、ちょっとキツいものになってしまう。

繁忙期のピークは「空いてないですか?」という入場枠を取る電話を、スカイツリーさんに昼と夕方、毎日のようにかけて交渉しましたが、仕入れが思うようにいかなくて……。

「もう、何なの!」確か部署で思わず、そう叫んだ記憶もあったりして。

スカイツリーと並んで、隅田川の水上バスも人気です。こちらはキャパシティが小さいので、時には社内で調整をすることもあります。例えばうちの外国人向けの観光の部署の予約状態を見ると、水上バスのチケットが20人分余っている。そんな時は、社内でチケットを譲ってもらう話し合いをして、水上バスさんに連絡をします。

「外国人のお客様のコースから出発の枠を20名分もらいました。同じ時間の空席が20名あるということなので、組み合わせると40名になります。うちのバスを1台増発しますね」という具合に交渉します。

●ねばり強くなりました

異動してきた先輩には、特に間違いをどう伝えていいのかがわかりませんでした。でもミスはお客様に直結してしまうので、先輩ということをあまり気にせずにやっていこうと。

ある時、注意事項をガイドさんやドライバーさんに伝える紙に、2号車の食事場所と行程順の変更の記載を書き漏らしていた。

「注意事項がないと、通常と同じ動きなんだと、ガイドさんもドライバーさんも思ってしまう。食事の場所に行っても食事がないということになってしまいます。一つ一つ確実にチェックしていきましょうね」という言い方ができました。

私、学生時代は細かいことは気にしない方だったんですよ。でも、この会社に入って気も強くなりましたが(笑)、ねばり強くなりました。学生時代の性格のままでいたら、ミスも多かったでしょうけど、今は細かいことまで目配りができるようになった自分の成長を感じます。

●自分で“企てる”部署へ

「企画という文字は“企てる”ということなんだから、何がお客様を楽しませることができるのかを自分で考えなさい」これは印象深く残っている上司の言葉です。

定期観光部でバスや食事場所の手配に3年間携わり、企画担当の部署に異動になりました。この部署の仕事は観光コースの企画です。私の最初の取り組みは体験型コースの導入で、見学と体験を組み合わせたものでした。

伝統工芸がテレビ等で紹介される機会が増えているが、ホームページで見つけた藍染の体験はどうだろうか。藍染にしたハンカチや手拭いを持ち帰れるのも魅力だし、説明も含め90分というのも手頃だ。バスツアーの企画で一番大事なのは、バスが止められる駐車場があるかどうかですが、浅草に近い藍染の工房はそれもクリアできる。

“伝統工芸”から藍染を考えたので、“伝統”つながりで歴史系のツアーにできないか。墨田区の歴史散歩と組み合わせ、食事は錦糸町の和食ブッフェ、江戸東京博物館も見学コースに加えて、藍染を体験していただく。

この「藍染体験とお江戸両国さんぽ」の初便の時は、私もツアーのバスに同行しました。藍染を体験するお客様を自分の目で見ることができて、実現できてよかったと思った。

ええ、おっしゃるとおり、確かにこの会社に入って東京観光には詳しくなりました。

えっ、東京観光の穴場スポットを教えて欲しいって。

例えば秋の行楽シーズン?それなら本駒込にある江戸時代の名園の一つ、六義園はどうでしょう。紅葉のライトアップが見ごたえあります。春の桜のシーズンなら佃島。浅草方面に比べ人が少なく、墨田川沿いの満開の桜をゆっくりと見ることができますよ。

取材・文/根岸康雄