【前編】入社5年目社員の本音「営業は人対人、気持ち対気持ち」明治・西村光平さん(2018.02.11)

■あなたの知らない若手社員のホンネ~明治・西村光平さん(27才、入社5年目)~

20代の部下との良好なコミュニケーションは中間管理職に取って必須の課題だ。そのためには彼らの仕事に対するマインドを知り理解する必要がある。若い世代にとっても、同世代がどんな仕事をしているのか、興味のあるところだろう。この企画は入社3~5年の社員の話にじっくりと耳を傾け、そのモチベーションを紹介する。

第11回目は株式会社明治。菓子マーケティング部調査グループ、西村光平さん(27才)入社5年目だ。

■「ちょっとお前、裏に来い」

最初の配属は営業で赴任地は北海道・札幌でした。担当者と交渉をして自社製品の売り場をより広く確保したり、売り場作りをするのが仕事です。

売り場の担当者の中にはクセのある人もいます。赴任して間がない頃でしたが、大手スーパーのバックヤードに、2時間立たされたことがありました。バイヤーさんとアポイントメントをとって、約束の時間に伺ったのですが相手にしてくれない。前任者は女性だったので、男に替わったことが気に入らなかったのでしょうか。僕は何もミスをしいないのですから、意地になって徹底的に待った。

殺風景なバックヤードに、スーツにネクタイをした身長180cmほど若造が、じっと立っているのですから目立ちますよね。気の毒に思ったのか、パートのおばさんが「大丈夫?」と声をかけてくれて。2時間立たされて、打ち合わせは2〜3分ですみましたけど。

札幌ドームに近い大手量販店のマネージャーも厳しい人でした。赴任して間がないある日、売り場でマネージャーを待っている時にたまたま両手がふさがっていて、商談書を商品の上に置いてしまった。それを見て「ちょっとお前、裏に来い」と。

「商品の上に書類を置くなんて、常識を逸しているじゃないか。何考えているんだ!」バックヤードで、マネージャーにコンコンとお叱りの言葉をもらいまして。

「すみません……」何回も謝りましたが、「もうこなくていいよ」と言われて。失敗をしでかしたのが朝一番で、一度会社に戻り開店時間に伺って頭を下げましたが、完全に無視。昼過ぎにもお店に伺ましたが、「すみませんでした」と僕の言葉に、一言も口をきいてくれない。閉店時間に近い夜8時頃にお店を訪ねて、この日3度目でした。「反省しております!」土下座するくらいの勢いで謝りました。すると、

「気持ちはわかった、以後絶対にあんなことはするなよ」と、諭されました。

■自分のカラー

担当してわかったのですが、この大手量販店のマネージャーは、情に厚くて面倒見のいい人なんです。ハロウィンの時でした。「ちゃんと売れるようにしろよ」と、菓子売り場にうちの商品を置くスペースくれたんです。張り切りましたね。会社が販促に出せるお金は限られていますが、100均ショップでハロウィンのお面や装飾品を仕入れ、マネキンといわれる売り場で試食を配る女性も入れて。僕なりにハロウィンのイベントを盛り上げたつもりだったんですが。

「そんなんじゃ全然ダメだよ。ただモノ置いて飾り付けただけじゃないか」合格点をもらえるどころか、マネージャーに叱咤されて。案の定、売上は伸びませんでした。

よし、今度こそとクリスマスの時は売上げが伸びるように、企画書をしっかりと作りました。ターゲットのちびっ子に商品を買ってもらうのと同時に、楽しんでもらおうと。僕がサンタクロースに扮して、予算の範囲内でホッケーゲーム等ちびっ子が喜ぶ景品を用意して、抽選会をやったんです。今度は自信が持てる売上げの数字を会社の上司に報告できました。

でも何と言っても、この量販店で成功したのは、嵐のコンサートに合わせてマネージャーと考えた売り場作り。嵐が札幌ドームでコンサートを開催したのですが、当時、「大人のきのこの山」と「大人のたけのこの里」のCMは、嵐の松潤を起用していました。札幌ドームに近いこの店にとってはビッグチャンスです。

このチョコレートを大々的にキャンペーンしようと。参考小売価格が一箱200円の二つの商品を100万円分ぐらい、売り場に積んだんです。コンサートに来たお客さんを中心に8割ほど売り尽くしました。

「西村くん、自分のカラーをしっかり出したほうがいいよ。意志を持って仕事に取り組んでほしい」これは札幌時代に、僕の父親のような年代の先輩と、飲みに行った時に聞かされた言葉です。

営業は泥臭いというか、人対人、気持ち対気持ちで仕事を進めていく。真摯にやっていくしかないと何となくわかりかけた頃、長野県に転勤になりました。札幌に赴任して9ヶ月後のことです。

長野に着任ししばらくして、商品の大欠損を引き起こすことになるのですが……。

商品の大欠損、そんな失態の中でも真摯に取引先と接するとはどういうことなのか、西村さんは自分なりに模索を繰り返す。

取材・文/根岸康雄

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