【前編】入社4年目社員の本音「どうせ私の意見なんて…じゃダメ!」バンダイ・渡邊奈津美さん(2017.11.22)

※この記事は@DIMEに2017.11.22に掲載されたものを転載したものです。

■あなたの知らない若手社員のホンネ
~株式会社バンダイ 渡邊奈津美さん(26才、入社4年目)~

「若い部下の考えていることがよくわからん」という声をよく耳にするが、そもそも20代の社員は何を考えているのだろうか。また若い世代にとっても、同世代がどんな状況に置かれていて、どのような仕事をしているのか。

そこで入社3~5年の社員の話にじっくりと耳を傾け、彼らの本音に迫るのがこの企画だ。

第二回目は株式会社バンダイ、ガールズトイ事業部マーケティングチームの入社4年目、渡邊奈津美さん(26才)。

●勉強不足、恥ずかしい

教育関係の企業を希望しましたが、玩具を通して子供の教育にも繋がるバンダイに入社しました。研修後はトイ戦略室をへて、希望していたガールズトイの部署に配属されました。

一番の失敗談は――女の子向けの商品の企画、開発、営業、プロモーションを担当するガールズトイ事業部には、アニメの好きな女性に向けての商品がなかった。テレビアニメでも放映された「ドリフェス!」のキーホルダーのようなラバーマスコットを初めて作ったんです。私がマーケティング担当になり、「この商品をどこでどのように売るのか、考えてください」と上司に言われました。

私は営業担当で店舗周りや、量販店のバイヤーとの商談も経験しましたから。アニメグッズに力を入れる店舗のバイヤーさんに商品を持ち込んで、「バンダイはこんな商品を開発しました。一緒に売りましょう」と、提案したんです。そしたら、あんた何言っての?という感じの冷たい目で見られまして。

「お付き合いもないのに、勝手にもの作ってうちに持ち込んで、買ってくれってさ、はいわかりましたなんて言えるわけないよ。あまりにも業界のことがわかっていない!」

30代前半のバイヤーさんに怒られました。私は商品を持ち込めば、どこも興味を持ってもらえるものと思い込んでいたのです。でも、それはうちが取引先と長年取引があるからで、ガールズトイ事業部はこのバイヤーさんとは限られたお付き合いしかなかったので、これまでのようにいくわけがないんです。

私は狭い世界で仕事をしていたんだ、勉強不足で恥ずかしい……そんな気持ちがこみ上げてきた。そのバイヤーさんの信頼を得るためにお店にも通い、業界を知るためにグループ会社のアニメに詳しい人からも、いろいろアドバイスをもらいました。

●それじゃダメだ

発売して21年を迎えた『たまごっち』は、ガールズトイ事業部を支えるアイテムの一つです。昨年、発売された『たまごっち』のマーケティングも担当しました。負けず嫌いの私は担当になったからには、自分で考えて物事を進めたいと思っていたんです。

 
©BANDAI,WiZ

でも周りはたまごっちのことを知り尽くした大先輩ばかり。例えば年間の販売個数の予測を立て、部材が無駄にならないよう適正な数を決める。責任が伴うし、難しい判断なのはわかりますが、「あと何千個いけるかなぁ」みたいな話は私を飛び越え直接、上司同士が話を進めてしまう。それは仕方がないことなんです。上司は私なんかよりも、はるかに知識と経験を積んでいるのですから。でも、ちょっと悔しくて……。

女児向けアニメのプリキュア商品のサブ担当だった時も、販促物を作ることになって。私は入社1年目から玩具売り場周りをしていましたから、子供たちが玩具に触れ、楽しんでいる姿を見て親が買う様子も見てきました。ですから販促物も「子供達が手に取り、遊べるものを店に置くべきだと思います」と、提案したんです。でも「コストがかかり過ぎて予算内に納まらない。現実的ではないね」と、販促物をディスプレイにして、見せることで販売につなげる形になりました。

ちょっと気持ちが荒んでいたんですね。

「どうせ私の意見なんて聞いてくれない。みんなの好きにすればいいんですよ」

20代の先輩社員とごはんを食べに行った時、ポロっと言葉にしたら、

「それじゃダメだと思うよ」と、先輩からそれとなく諭されました。

「自分の意見が叶わなくても、渡邊さんが考えたことが大事だよ。どうせ聞いてくれないなんて思っちゃ絶対にダメだ。実現しなくても関わりを持って取り組むべきだし、その方が楽しいはずだよ」

その言葉は心に残っていますね。

思い返すと、「プリキュアの変身アイテムが年間どれくらい売れるか考えてみて」と、上司に言われ、後でやろうと思っているうちに期限までに間に合わなかったことがありました。

「できなかったら事前に言ってほしい。どうしていいかわからなかったら聞いてほしい」とその時、上司にアドバイスされまして。私は報告や相談が十分にできていなかった。“ホウレンソウ”の大切さがよくわかっていなかったんですね。上司に逐一、報告し相談して自分の考えと照らし合わせていく、そんな仕事の進め方がわかってくると、仕事のはかどり方が違ってきました。

渡邊奈津美さんの“悪戦苦闘”は、まだまだ続く。

取材・文/根岸康雄