【後編】入社4年目社員の本音「認められるまで徹底的にやる!」バンダイ・渡邊奈津美さん(2017.11.23)

■あなたの知らない若手社員のホンネ
~株式会社バンダイ 渡邊奈津美さん(26才、入社4年目)~

「若い部下の考えていることがよくわからん」という声をよく耳にするが、20代の社員は何を考えているのだろうか。また、同世代はどのような状況に置かれ、どんな仕事をしているのか。入社3~5年の社員の話にじっくりと耳を傾ける。

第二回目は株式会社バンダイ、ガールズトイ事業部マーケティングチームの入社4年目、渡邊奈津美さん(26才)。取引のない業界のバイヤーに新商品を持ち込み、業界を知らないと怒られたり、『たまごっち』のマーケティングの担当時は、相談されることなく上司同士が物事を決め、ちょっぴり悔しい思いを味わったり。ホウレンソウの大切さに気づき、徐々に仕事ははかどっていくが――。

前編はこちら

●認められた!

入社3年目、法人の営業を担当しました。大手量販店のおもちゃ売り場を巡回して、店長さんとお話をして、売り場の陳列棚を改善したり、バイヤーさんと商談をしたり。店舗の責任者の中には気難しい方もいます。ある店舗では、『たまごっち』の販促物に「故障中」の張り紙が貼ってあって。手に取ってみると、別に問題はなさそうなんです。

「これどこが壊れているんですか」と店長に聞いたら、

「テメーの会社の販促物なんだから、故障の箇所ぐらい自分で把握しろ!」みたいな言われ方をしまして。

そこで私は店長に言ったんです。

「わかりました。有難うございます」と。

相手は私の父親ぐらいの年齢ですし、すごく怒っていたので、「故障なんかしてないじゃないですか」と言っても、火に油を注ぐだけで何にもならない。理不尽ですけど仕方ないと思いつつ、お店を後にする時に販促物の「故障中」の張り紙をそっとはがして。

その店舗は何回も巡回し、挨拶できる人間関係を築いたのですが、私の中ではずっと怖い店長さんでした。

そして1年後、

「実は担当を外れることになりまして、このお店にも来られなくなっちゃいます」と、店長さんに挨拶したんです。すると、

「若いし女の子だし、男の営業に比べてちやほやされているんじゃないかと思って、最初から厳しく応対したんだ」と、言葉をかけてもらいまして。なぜ私に厳しかったのか、理解できたのですが、次の店長さんの言葉が嬉しかった。

「キミは僕がどんなに言っても強かったよ。芯がしっかりしている」

認められたんだという思いが、こみ上げてきました。

●メンタル強いね

法人の大手量販店のバイヤーさんも厳しい人でした。

「『たまごっち』がリニューアルするんです」

最初の商談の時、バイヤーさんは「僕は売れる気がしないな」と。「新製品の『Tamagotchi m!x』シリーズは育てた『たまごっち』が結婚して、親の遺伝子を引き継いだたまごっちが産まれる、自分だけのたまごっちを育てられる楽しさがあるんですよ」「でもね、うちは30店舗しかやりません」「そ、そんな……」

私は諦めずに何度もバイヤーさんの元に通い、説得しました。

「御社の昨年の『たまごっち』の売れ行きから推測しても、新製品の売り上げは期待できます。30店舗じゃもったいない。是非とも100店近い店舗の玩具売り場で、展開をお願いします」

また、バイヤーさんにお願いしていた別の商品で、発売日の直前に発売延期というアクシデントがありました。

「1ヶ月分の売り上げはどうしてくれるの!? 今から謝罪文を全店に送ってくださいよ」

バイヤーさんからそう言われたのが夜の8時。謝罪文を印刷して100店舗近い量販店すべてに手書きで宛名を書いて、速達で郵送しました。最終的には発売延期になった商品も新製品の「たまごっち」も売れまして。
担当を外れる時にご挨拶にお伺いしたのですが、その時のバイヤーさんの言葉も忘れられません。
「キツイことを言ってごめんね。それにしてもキミ、メンタル強いね」

ガールズトイ事業部を志望したのは、子供の頃の思い出が心にあるからなんです。私は小学校時代、モーニング娘の辻ちゃんと加護ちゃんが大好きで、雑誌の中の二人の化粧や着ている服がキラキラ輝いて見えて、私もこうなりたいって思っていました。そんな女の子が憧れを抱くものをこの会社を通して発信していきたい。

残念なのはキャラクター商品を製作しても、1年以内で販売を終えるケースが多いことです。うちの会社にもガンプラやたまごっちのように、長く愛されている商品がありますが、他社さんのお人形のように、お母さんの世代が遊んだものを自分の子供にも買い与えるような、何十年も愛される女の子の玩具を作りたいですね。

取材・文/根岸康雄