※この記事の内容は@DIMEで2017.12.2に掲載されたものを転載したものです
■あなたの知らない若手社員のホンネ
~エステー株式会社 池田咲さん(26才、入社3年目)~
「若い部下の考えていることがよくわからん」という声をよく耳にするが、そもそも20代の社員は何を考えているのだろうか。また若い世代にとっても、同世代がどのような仕事をしているのか。興味のあるところだ。そこで入社3~5年の社員の話にじっくりと耳を傾け、彼らの本音に迫るのがこの企画である。
第三回目はエステー、営業部門営業戦略グループの池田咲さん(26才)、入社3年目だ。高田馬場駅に近いオフィスで話を聞いた。
●電飾でピッカピカ
私が担当している仕事の一つが販促物の業務で、中でも特注販促物と呼ばれる、ホームセンター等の量販店で用いるものです。
「“お部屋スッキリ”とか、“強力消臭”とか、他社と比べてコピーに違い出すのは難しいですけど、お店側は他の量販店と差別化できるような、お客さんの目をひく販促物を求めていますね」
うちの各支店のセールス担当者とは、よくそんな話になります。
「商品を大きく書いたのぼりを作ってみますか」「もっとインパクトのあるものはないかな、売り場に並んだ商品のところにお客さんが足を向けるような、遠くからでも目立つ何かこうでかいものを」「大きいもの……」
そこでセールス担当者と考えたのは、実物より10倍以上もある大きな「ムシューダ」。うちのデザイングループにお願いして作ってもらったものを、お店に持ち込み、組み立てました。ダンボールを組んで、外側に印刷した商品のパッケージを貼り付け、出来上がった巨大な「ムシューダ」をホームセンターの天井から吊るしたんです。
もっと目を引いた特注販促物は、オートバックスのある店舗のディスプレイでした。
「入口を入ってすぐ正面に、エステーの商品を置ける場所が取れたので、20〜30万円かけて販促をしたい」と、うちのセールス担当者から相談されました。一つの商品は香りに違いによって、パッケージが5色ほどにカラー分けされています。
「カラフルさを謳いましょう」ということになり、企画制作会社に発注し、色とりどりの派手なボードの下を車型にして、「クルマの消臭力」と書いたパネルを貼りつけた特注販促物が出来上がったんです。
「目を引くね」と、セールス担当者。「もっと目を引くために光らせませんか」と、提案したのは私でした。セースル担当者にハウスウェア店で、10mの細いLEDライトの電飾を2本買ってきてもらい、ボードを電飾でデコレーションしたんです。当日は私もお店のディスプレイに立ち会いまして、見上げるとこれまでに見たことがないほど、販促物がピッカピカに光って、目立っていて自分でも驚きました。
●性格はネガティブ
ピッカピカな電飾とは違い、実をいうと私、性格が基本的にネガティブなんですよ。例えば、業務の一つとして販売店で、商品がどれだけ売れたか、POSデータの蓄積と管理を担当しているんですが。昨年、私の提案で新しいソフトウェアを導入して、これまで人の手でやっていた作業を機械化したんです。楽になると思ったのですが不具合が多くて、「結局、人の手で作業をしたほうが早かった。200万円かけて導入したけど、あまり意味がなかったですね」みたいな愚痴を上司にこぼしたんです。すると、
「池田さんが検討して導入しのだから、主体的に改善しようとしなさい。トラブルが改善してうまく稼働するようになれば、時短に繋がるのだから。どうしてそういう考え方ができないのかな?」と、注意されまして。今更ながら、失敗にしか目がいかない自分の悪い点を気付かされましたね。
『赤毛のアン』はエステーが社会貢献活動の一環として、15年間主催するミュージカルです。春にオーディションを行い、子供達を受け入れ、夏に全国8カ所で公演を行い、1万5000人ほどのお客様を無料で招待します。私は『赤毛のアン』の担当になって2年になります。リハーサルの時から一生懸命に演じる子どもたちの姿を目にして、私は一人ウルウルしてしまう。
公演の時は全国の支店のセールス担当者に手伝ってもらうことになっています。そこで、
「今年から公演会場にリーダーを設けたいと、セールス担当者に発信しようと思っているんですよ」と、私は上司に提案したんです。それまでは「受付をお願いします」「会場整理をやってください」という感じで、こちらからセールス担当者に頼んでいたのですが、社員の方々に一層の情熱を持って取り組んでいただきたい。そこで現場にリーダーを設けて、さらに主体的に関わっていただきたいと、私の提案にはそんな思いが込められていたんです。
しかし、池田咲さんの失敗は加速し、ついに会社に辞表を提出しなくては……、と頭をよぎる窮地に陥ってしまうのだ。いったい何が起こったのか。
後編へ続く。
取材・文/根岸康雄