【若手社員のホンネ・前編】入社4年目社員「実力がないのにすぐ転職、はちょっと違う。仕事で一つずつ発見していくのが楽しい」クックパッド・村山凌亮さん

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ITの殻の中で、SNSで人とつながり、体験や密な人間関係が乏しい。ウィズコロナ時代、ますますその傾向は顕著だ、昨今の若い連中はなっとらん、そんな中高年の声をよく耳にする。だが、20代も仕事の中で、経験を積み、密な人間関係でもまれている。このシリーズはそんな新人の体験談と成長の過程を紹介しる。20代は同世代の仕事への奮闘ぶりを、中間管理職の人たちは若い世代のやる気を再確認する企画なのだ。

シリーズ第63回、クックパッド株式会社 マーケティングサポート事業部 営業グループ 村山凌亮さん(26・入社4年目)。料理レシピ投稿・検索サービスで知れるクックパッドは食品メーカーと一緒にレシピを考案し、サイトに掲載する等の広告事業部も収益の柱だ。村山さんはその事業部に所属をしている。

クライアントが求めているものを考える

クックパッドはレシピのイメージが強いが、サイトを訪れる月間およそ5800万人は女性が中心で、家庭の主婦も大きな割合を占める。女性へのインパクトは料理のレシピだけではない。家事に係る日用品も大いに興味が持たれる。

その案件はクックパッドで食器用洗剤の広告を展開したいというオファーだった。入社3年目のことである。資料作りが得意な彼は、会社に蓄積されたデータをもとに関連ある資料をたくさん作って提出した。だが、

「村山クン、結局、何が言いたいの?」クライアントにそう指摘されバッサリと切られる。

「村山さ、データを何十何百集めてもあまり意味がないんだよ。要になるのはそこからお前が何を伝えたいかだろう。クライアントはそこが一番知りたいんだ」

この一件では、上司にそう諭された。資料作りは苦ではないが、商談でのトークが苦手、そんな思いを彼は入社以来、抱き続けている。この機会に何とかしたかった。

「申し訳ない。リベンジさせてください」

彼は上司に頼み込んだ。さて、どうするか。

説得力を持たせる資料にするためには、やみくもに数字をまとめるのではなく、一つの流れを作りわかりやすくする。では、どんな流れに基づいて資料をまとめるか、彼が注目したのは試作の結果だった。

食器用洗剤で弁当箱を洗うには、何が一番大事な要素か。クックパッドで配信した過去3年間の試作をまとめてみると、以前は泡落ちの良さが重要視されていた。だが昨今は油落ちの良さに注目が集まっている。彼の作った資料からは、弁当箱用の食器用洗剤のトレンドが明確に読み取れた。

「なるほど、すごくよくわかりますね」メーカーの担当者の声は明るかった。彼の作成した資料は次の売れ筋商品を暗示していたからだ。彼にとって入社して以来、一番のほめ言葉だった。

一歩一歩着実に成長していく

昨今、新入社員の離職率は3人に1人といわれる。特にIT関連の離職率は高い傾向だ。

「この会社に限らず、僕の周りを見ると、半分ぐらいは転職しているという感じですね」

――それはなぜでしょうか。

「おそらく多くの人は、会社に入ったらやりたいことがあって、自分が思っていたことと違うとサッと辞めて、次のポジションを探すという感じじゃないですか。入社当時を振り返ると、先輩たちの多くは別の会社に移りました。むしろ転職を考えないほうが、不自然といいますか」

だが、入社4年目の彼は、徐々に職責を果たせるようになり、スキルアップも実現した。

――村山さんは、なぜ転職しなかったのですか。

「僕は力不足を自覚していたというか。実力がないのに、すぐに転職するのはちょっと違うかなと。仕事の中で一つずつ発見していくのが楽しかった」

転職せずに続いたのは理由がある。商談でのトークの仕方、要となるテーマを絞り込み、クライアントに提案する術。説得力のある資料の作り等、会社で学んだことは数多い。

人にはそれぞれタイプがある、それを認めることが大切だ

「この会社は人間関係がわりとフラットで、上司にもはっきりものが言える社風があります」それも彼にとっては、この会社の居心地の良さなのだろう。

例えば、「僕は自分の仕事をやり切りたいタイプで、それを見守ってくれる上司が理想です」と、部長に話をした時のことだ。部長はちょっと首をかしげた。

「でもね、村山クン。自分流にのみこだわっていると、成長する機会を逸することになるかもしれないよ」そんな言葉に、彼はハッとさせられた。

それまでは部下のやりたいようにやらせてくれる上司が、理想だと思っていた。だが、部下の仕事を把握し、時には部下のレベルアップのため、指示を出すのは大切だと、彼は自分の中のリーダー像を改めた。

「1週間に3件の提案をクリアしましょう」上司にそう言われた時は、

「数よりも質が大切だと思います。数だけ追っても意味がありません」

彼のそんな反論に、「村山にそう思わせたのは、こっちの説明不足だった」と、言葉を補いつつ、「でも、3件と決めることで、行動できる人もいるんだよ」と、上司は説明した。

「なるほど…」

数を決めることが行動に結びつき、結果を挙げる人も確かにいる。人にはそれぞれタイプがある、それを認めることが大切だと彼は一つ勉強した。

「新人の頃は単なるナマイキなヤツと思われていたでしょうけど、今はそのナマイキさに内容と説得力があると思われているかも(笑)」

多少は人のことを考え自分で判断し、少しは説得力のあることを言えるようになった――、そこが社会人として成長した点かなと、村山凌亮にはそんな自覚がある。

この会社で働き続けることを前提にしてと、前置きしながらも、「クックパッドは世界74ヵ国でサービスを展開していますが、料理のレシピが中心です。僕が担当する広告やマーケティングは、ほとんど手が付けられていません。例えば国内メーカーが海外に販路を広げる際に、現地のクックパッドを活用した形で、マーケティングをサポートできれば、この会社の価値はさらに広がると思います。面白いんじゃないかな」

けっこう彼の夢は、広がっているのである。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama