【前編】看護師6年目の本音、「がんと向かい合った患者さんがどれだけ生きようと頑張っているか、私は知っています」聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院・猪子萌さん

あなたの知らない若手社員のホンネ~/聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 猪子萌(27才、看護師6年目)~

様々な現場で働く若手社員を紹介しているこの企画、今回紹介するのは看護師。ほとんどの人は一生のうち何回か看護師にお世話になるが、いったいどんな仕事なのか。中間管理職も若手社員も“白衣の天使”の仕事ぶりを参考にしてほしい。

シリーズ第56回、神奈川県瀬谷市にある総合病院、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 看護師 猪子萌さん(27・看護師6年目)。担当は病床数52床の消化器外科。入院する人の半数はガン患者で、手術を行う患者がほとんどである。

「もえちゃん」

出身は横浜です。高校時代はバスケット部で進路は決まっていませんでした。たまたまその少し前に祖母が子宮ガンで他界しました。その時、看護師の仕事ぶりを目にして、人を助けたり支えたりする仕事に就きたいと思いました。

3年間の看護学校を卒業して、ここは私が実習した病院でした。私はドラマ等で取り上げられる救急センターの看護師に憧れていました。当時は搬送され目の前で亡くなるような患者さんの看護に自信がありませんでした。まず消化器外科病棟で勉強しようと思いました。

1年目の新米の頃は失敗だらけでした。最初は教科書通りに患者さんに症状を聞いて、細かく記録を取らなければいけない、ミスをしてはいけないと感じました。低体温症で震えていた手術後の70代の男性の患者さんに、私はいろいろと問いかけましたが返事がないので私の声が小さいのかと思って、「痛いですか!?」「寒くないですか!?」声を張り上げたら、「聞こえてるわ!!」と怒られてしまいました。

「見るからに辛そうな人に、わかりきったことを聞いたら、そういう反応になるに決まっているでしょう」と、先輩に言われ失礼なことをしたなと反省しました。その患者さんにも私はよく話しかけました。新米看護師の必死さが伝わったのでしょうか、「もえちゃん」と名前で呼んでくれて、入院中は孫のように可愛がってくれました。

いろんな患者さんのことが脳裏に浮かぶ

医師は患者さんの病気を治すことに、集中します。私たち看護師は、何より患者さんに寄り添うことが仕事です。膝を折って患者さんと目線を合わせ、手をさすったりしてお話を聞きます。ほとんどの患者さんが手術を受けます。皆さん不安を抱えているのでまず患者さんのお話をじっくりと聞きます。それだけでも患者さんは気が楽になり、信頼関係が深まりより手厚い看護につながります。

開腹手術をする患者さんが多いのですが、術後はベッドを平らにした状態で上向きに寝ると、傷口が引っ張られる形になって辛い、そんな時は患者さんの上半身を起こすと少し楽になります。同じ姿勢で寝ると腰痛の原因になりますから、「横を向きましょうね」と声がけをすることもあります。

術後は歩くことがリハビリです。「まずはトイレまで歩くことを目標にしましょう。一緒に頑張っていきましょうね」。点滴を吊るしたスタンドに手を添え、ゆっくりと院内の廊下を歩く患者さんに付き添います。

最初に怒られ、その後の入院生活で「もえちゃん」と可愛がってくれた70代の患者さんも、亡くなられました。いろんな患者さんのことが脳裏に浮かびますね。自営業でバリバリ仕事をしていた60代の患者さんは、胃ガンでステージ4でした。「ガンを告知されて落ち込んだし、息子に病気のことを話すと泣かれてね。でも、オレは頑張りたい」と。よくお話をしてくれました。

先生も「一緒に頑張りましょう」と、抗ガン剤治療を続けたのですが病状は進み、胆のうから胆汁を流す菅がつまる胆管炎を併発してしまいました。

お腹が痛い、気持ちが悪い、食べられない、熱も出る、だるい、どんな状態でも患者さんは抗ガン剤を続けたなくてはいけません。私たちは止めてほしかったのですが、「元気になる可能性が少しでも残されているのなら、それに懸けたい」とおっしゃってくださいました。生きるために頑張りたかったのでしょうか、家に戻りましたが、食事が取れず脱水症状を起こして再入院されてしまいました。

それでも抗ガン剤治療を希望しましたが、「できる状態ではありません」と、医師に告げられ、緩和病棟のある病院に転院する2〜3日前にお亡くなりになりました。