■あなたの知らない若手社員のホンネ ~Sansan株式会社/片芝亮友さん(25才、入社4年目)~
「部内の若手社員はやる気があるのか!?」
時としてそんな思いを感じる中間管理職には、若手社員への見方を変えるきっかけとして。また、若手には同世代の仕事ぶりを知る機会として、「若手社員の本音」は、これまでバライティーに富んだ職種に携わる若手社員を紹介してきた。今回はクラウド名刺管理サービスの企画・開発・販売を展開するSansanだ。
シリーズ48回、Sansan株式会社 Eight事業部 片芝亮友さん(25・入社4年目)。「名刺をスキャンする」だけで、「誰と名刺交換したのか」という情報が社内でデータベース化され、組織全体で共有できるサービスを展開するSansan。現在、6000社以上が利用する。“働き方を革新する”“社会インフラとなるようなサービスを作りたい”“世の中を変えたい”等、会社説明会での代表者の言葉に感銘し入社した片芝さん。07年創業のITを駆使した会社で、失敗も成功も試されることが多かった。
“世の中を変える”熱いものがこみ上げてきた。
出身は大阪です。就活では時代の最先端にいきたいとIT企業を志望して。インターンを経て、大手のIT企業に内定をもらいまして。新卒採用のポータルサイトを見て、Sansanを知ったのは実はその後でした。
内定者の懇親会で上京した折に、興味があったSansanの会社説明会に参加すると代表が名刺をどうしていきたいのか、熱く夢を語るんですよ。同じ部署の人間がどういう人と、名刺交換をしているのかわからなかったが、デジタライゼイションによって、名刺をクラウド上で管理できる。名刺を共有すれば新規開拓のルートが社内にあることがわかったり、新しい出会いを創造できる。すべてのイノベーションは出会いからはじまる。出会いでビジネスを加速させることができる。名刺のクラウド化をインフラにして、働く人たちのビジネス基盤にしていこう。
そんな“働き方を革新する”という話に、感銘しました。熱い思いがこみ上げてきた。自分も世の中を変える一員でありたいと。こうと決めたら突き進む、僕の頑固な面はフレンチの料理人の父親譲りです。大手の内定を辞退し、入社した時の僕の社員番号は183。入社から4年目で社員番号が600番を超えましたから、今と比べて当時はこぢんまりとした会社でした。
配属はマーケティング部コンタクトグループ。仕事はテレアポ。ウェブ広告等で集めたお客さんの候補に、電話でサービスをセールスしアポイントを取って営業にパスして、受注に繋げる。商談相手のニーズを掘り下げ、受注の決済権を持っているのは誰か、どのくらいコストをかけられるのか等々を、聞かなくてはならないのですが。
「いらん言うてるやろ!ガチャン」
「この前、断ったやないか」「なんで何回も電話してくんねん!?」「申し訳ございません、ただ、前回と変更点がございまして…」「いらん言うてるやろ!ガシャン」と、電話を切られたり。話を聞いてもらえない。時にはボロカスに言われる。テレアポ部隊に同期3人が配属されたのですが、受注に繋がったのは僕が一番遅くて。最初の受注まで3ヶ月かかりました。
テレアポに向いてないんじゃないか…、悩みましたね。30分早く出社し、先輩に電話対応の相手をしてもらったんです。例えば従業員300人規模の会社の総務担当で、名刺管理に多少、興味を持っているという設定で。
「Sansanの片芝です。総務の何々様いらっしゃいますか」
「前回お断り頂いた際は、使いたい機能がないという理由でしたが、今回は案件機能といって、名刺だけではなく商談記録を投入できる機能を、ご提供できるようになりまして」等々、対応が機械的にならず、電話口の相手に親近感を持ってもらえるように、毎朝練習しました。
これまでは一度断られた方に再度、テレアポをするという仕事内容だったので、きつい断られ方をしたり、アポイントも取りづらかったのですが。徐々にアポイントが取れだして営業にパスし受注に繋がってくると、新規の問い合わせの案件を触らせてもらえるようになりまして。アポ取りは伸びていったんです。
ある時、テレアポ部隊の人間と営業マンがタッグを組んで、発注金額を競い合うコンペがありました。1才上の営業マンが僕の相方で、僕たち以外は、中途採用でバリバリのテレアポと営業マンのコンビばかり。「新人二人でどこまでやれるか、頑張ってみな」みたいな雰囲気だったんです。まず相方と2人で受注金額達成のために何をやればいいのか、行動リストを洗い出しました。
仮に受注金額を月100万円近くに設定すると、営業にパスするアポイントメントを50〜60は取る必要がある。そのためには6000以上のテレアポが必要になります。相方の営業マンは士業といって、弁護士や税理士等の事務所への課題提案がうまかった。テレアポも士業を意識して進めました。
「名刺管理でどういう識別するか、ポイントを御社の計画に組み込んで、ご提案させていただきたいのですが、1時間ほどお時間をいただけますか」という感じです。
士業の人たちは新サービスより、既存のものを検討して導入したいという傾向が強い。案件ごとにラベル付けすれば、その案件に関係ある人たちに、一括メールを定期的に送ったりできるサービスを紹介したりしました。
コンペでは僕たちのユニットが、受注金額1位を取ることができて。僕とタッグを組んだ営業マンがトップの成績を収めることができたんです。テレアポ部隊に8ヶ月ほどいましたが、部署を異動する頃には、「成果を出したな」と上司に声をかけられました。
テレアポ部隊から、片芝さんが異動した先はSansanの個人向け名刺管理アプリEight。ここでも新たな取り組みに泣いたり笑ったりの業務が待っていた。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama