【後編】入社5年目社員の本音「天気予報は究極の生放送です」ウェザーマップ・多胡安那さん(2018.06.28)

あなたの知らない若手社員のホンネ~ウェザーマップ 気象予報士/多胡安那さん(契約5年目)~

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部下のモチベーションを理解することは中間管理職にとって非常に重要。とは言っても今回は気象予報会社のウェザーマップに所属する契約5年目の気象予報士である。よく知られているがジャンルだが、気象予報士とはどんな仕事なのか。その辛さを含め紹介する。

シリーズ第26回目は、お天気キャスターの森田正光さんが、会長を務める株式会社ウェザーマップ所属の多胡安那さん。会社との契約が5年目の気象予報士だ。2005年3月に聖心女子大文学部卒後、マスコミで天気の仕事がしたいと、天気予報配信等の会社に所属。読売テレビでお天気キャスターに抜擢される。

その後は日テレで営業職を経験。2011年に気象予報士の資格を獲得。お天気キャスター時代の録画等が、ウェザーマップのスタッフの目に留まり、テレビ東京出演の仕事が舞い込む。

「残り1分」等の指示に、ピタリと合わせ、お天気コーナーを終わらせることができる。“尺を合わせる”のが得意な一方、ネガティブところがある、生放送中の間違いをものすごく気にするタイプと自認する彼女、それ故なのだろうか、試練は待ち受けていた。

■しゃべることが怖くなる

「お天気のコーナーは生放送なので、その場で終わる。その日のことはさっさかと忘れて、反省もしないよ」それはウェザーマップの会長で、お天気キャスターの森田正光さんに言われたことです。森田さんは私の性格をわかっていて、そんな言葉を贈ってくれたのかもしれません。

平日はTBS等の天気の原稿を書いて、土日の夕方は、テレビ東京のTXNニュースの2分ほどの天気のコーナーを担当したのですが。私は間違い等を気にする性格なので、メンタル的に支障を来したのかもしれません。頭でわかっているのに、なんとなく声が出にくくなって。周りには風邪を引いたのかなくらいにしか、思われませんでしたが、徐々にテレビでしゃべることに、怖さを感じるようになりました。番組を引き受けて1年ほどした頃でした。

「お天気キャスターを替わってください」

そう自分から上司にお願いしたんです。私の性格を上司や仲間はわかっていて、優しい言葉をかけてもらいましたが。

こんなことで交代して、私って……。テレビ東京の番組を降りた時は悩みましたね。その3ヶ月後に「あさチャン!」というTBSの新しい番組に、気象予報士としてサポートに回りました。サポートはキャスターが読む原稿の構成を考え、トピックとなる材料を渡します。いろんなところにアンテナを張って、例えば気象予報士としての知識を駆使して、雨雲レーダーをじっくりと見たりもしました。

もしかしてこの地域、100ミリ超えてるんじゃない? 今年、時間あたりの降雨量は日本一だったんじゃないかしら、そうだとしたら記録だわ。そんなことに気づくと、気象台に連絡して確認を取り、誰よりどの局よりも早く話題の材料としてキャスターに渡したり。

お天気コーナー以外でも、使われることがあります。例えば朝一の番組の全体会議で、気象班の私が「今日は北海道でも真夏日になりそうです」と発言すると、ニュース担当の方が「北海道のどのあたり?」と。「帯広の可能性が高いです」「なるほど」、そこで帯広にカメラを出してもらい、ニュースの項目に入ったり。天気予報の番組のサポートの仕事も、やり甲斐があって面白い。

■天気予報は、究極の生放送

天気予報に日々向き合っていると、気象衛星やコンピュータを駆使しても、天気を予報するのは難しいと日々、感じます。例えば関東のとりわけ東京の雪。東京の場合、0•5度気温が違うだけで、雪か雨か違ってくる。スーパーコンピュータのデータや、他にもたくさんの情報を加味して目星をつけますが、それでも外す時があります。

梅雨の時に多い北東気流は、関東に曇り空と涼しい空気をもたらす時の気圧配置ですが、これも気象予報士泣かせです。北東気流がいつ解消するかによって、晴れる時間が変わってくる。午後には晴れるでしょうと予報を出したら、夜まで北東気流が入り続けて晴れなかったなんていうこともあります。

「TBSニュースバードで求人があるからやってみませんか」上司から再びCS放送のテレビ出演の話をもらい、オーディションに受かって。CS放送のニュースバードのお天気キャスターに復帰したのは2014年。一昨年は声の調子を崩して、お休みをいただいた時期がありました。

「今回は辞めないで休みにする。多胡さんはこれまでの実績もあるし、頑張ってくれているのはみんなわかっているから、焦らなくてもいい。待っている」その時の上司のそんな言葉は忘れませんね。気象予報士の資格を持った人は1万人ほどいます。お天気コーナーのキャスターをやりたい人はいくらでもいるのに、私を使い続けてくれて。

今も天気予報の番組のサポートやコラムの仕事、ヤフー動画の制作等とともに、週に2回、ニュースバードのお天気キャスターを続けています。

与えられた短い時間で、視聴者が望んでいることと、自分の言いたいことを凝縮して語る時の緊張感。「20秒短く」とスタッフに言われ、「わかりました」と、コーナーの最後をピタリと合わせる。“きっちり時間通りに入ったぁ〜”という時の込み上げてくる充実感。

今現在の空模様を伝える天気予報は、究極の生放送です。番組をバシッと決めた時の達成感は、他では味わえないものがあります。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama