【前編】入社3年目社員の本音「チャレンジ精神からオーバーワークに」Hotels.comモリセイ雅さん(2018.04.13)

あなたの知らない若手社員のホンネ~Hotels.com/モリセイ雅さん(28才、入社3年目)~

20代の部下との良好な人間関係づくりに、外資系企業の社員の話は参考にはならないという声もあるだろう。だが、新卒の離職率が3年で3割という現実がある。いったい日本の会社に何が足りないのだろうか。今回はその答えの一端を垣間見れたようにも感じた。

同世代の読者も、外資系企業の若手社員がどんな仕事をしているのか、興味のあるところだろう。

入社3~5年の社員のモチベーションと本音に迫るこの企画、第18回目は200の国と地域でサービスを展開する外資系企業、エクスペディアホールディングス株式会社 マーケティングマネージャーHotels.com日本地区 モリセイ雅さん(28才)。前職で3年半、転職して今の会社に約2年半。ハーフで外資系企業に勤務、マーケティングを担う彼女のマインドは、欧米人と相違ないと思いがちだが、豈図らんや極めて日本人的。そのギャップがモリセイさんの諸々のエピソードに繋がっていく。

■“円”と“USドル”

父はニュージーランド人、母は日本人です。日本で義務教育を受け、15才から大学卒業までニュージーランドで、学校の寮やシェアハウスで生活をしました。大学ではインターナショナルビジネスなどを専攻しまして、さて就職はどうするか。

日本のほうがバイリンガルの需要がある。有利な条件で就職できるだろう。ニュージーランドやオーストラリアと比べて、日本のビジネスの規模ははるかに大きい。両親も日本にいますし、自分を育ててくれた国でビジネスを学んでみたいと思いました。

大学3年の夏休みに日本に戻り就活をしまして。新卒で就職したのは、アフィリエイトマーケティングサービスを提供する日系の企業でした。ウェブサイトやブログ、メールマガジンといったネット媒体に、広告を掲載するネットワークを展開していまして。入社当時は、新規広告主を開拓する営業を担当していました。

年数を経ると、いろんな形態のマーケティングにチャレンジしてみたいという思いが、徐々に募りまして。ビジネスにフォーカスしたソーシャル・ネットワーキング・サービスのLinkedInに登録したんです。すると、ある日突然、リクルーターから連絡をもらいまして。「Hotels.comにポジションが空いています」と。前職のアフィリエイトマーケティングのマネージャーとしての経験も活かせるし、いろんなマーケティングを経験できる環境だったので、スキルアップに繋げたいと考え、この会社に転職をしたのが15年の秋です。

入社当時、ワールドワイドで事業展開するこの会社では、社内の金額の表記がUSドルだということを知らなくて、売上実績レポートに円の数字を記入したんです。すると、「100万、ミヤ、いきなりすごいなー」と、海外にいる上司に驚かれまして。話を聞いているうちに、上司はUSドルと思い込んでいることを知り、「ノーノー、ジャパニーズエン」と言ったら、100万の価値が全く異なるので、急に冷めた雰囲気になったことを覚えています。

社内にはたくさんのマーケティングチヤンネルがあります。アフィリエイト、SEO、SEM、ブランドチャネル等、それぞれ専門的な知識を持ったスタッフが運用しています。今の私の仕事は海外支社にいる各マーケティングチャネルの担当者と話をして、どうすればより日本でのマーケティング活動が、効率的になるかを調整すること。Hotels.comの日本サイトのマーケティングを多角的な視点から考えて、日本でのマーケティングのチャネルを、一つ一つ育てていくのが業務です。

■ノーとは言いづらい性格でして……。

それぞれのマーケティングチャネルのベースとなる知識は、知っておく必要があるのですが。この会社はいろいろなことにチャレンジすることを、奨励する文化があるんですよ。私もいろんなことに興味がありましたから入社当時、

「ミヤ、やってみない?」「ミヤなら、できると思うよ?」そう上司やスタッフに薦められると、チャレンジしてみたいという思いとノーとはいいづらい性格もあって……。

「じゃあ、やってみたいです」「面白そう、やらせてください」

結局、いろんなマーケティングチャネルに参加をしました。ヤフー等で“ホテル予約”を検索すると、いっぱいヒットします。その中でうちの会社のサイトを、いかにして検索順位の上位に持ってくるか。例えば海外では春の海外のマーケティングチームから、「イースター」を主なテーマに、キャンペーンをやってほしいとオファーがあったとします。海外では「イースターホリデー」は大きなイベントです。でも日本のお客様には「イースター」はまだよく知られていない。ではどうすべきか。

「イースターホリデー」を「春の旅行応援特集」等に変更をすると、日本人にとってもわかりやすい。日本の祝日や旅行シーズンに合わせてセールスを開催したり。さらに、SEOという手法ですが、「春」「旅行」「ホテル」など、検索上位に上がりやすいキーワードを文章に入れることで、ヤフーやGoogleの検索で、Hotels.comのサイトがさらに検索順位が上位に来るのではないか。実際に試してその反応を確認したり。

LINEやFacebookの運営を担当するソーシャルチャネルの担当者とは、この夏、日本人に人気のある旅行先はどこで、セールス情報をいつ配信し、その際、どのような画像を使うのが効果的かなどを話し合います。各マーケティングチャネルの担当チームは海外にいますから。私は日本マーケットの担当者として、スカイプを使ったテレビ電話やメールで、海外のチームとやり取りをしました。

それぞれのマーケティングチャネルを深掘りする面白さはありましたけど、気がつくと連日、夜遅くまで会社にいる働き方になってしまった。私は自分のキャパシティーをオーバーして仕事をしている。こういう仕事の仕方をしていること自体が失敗だなと。終電に乗り遅れないように駅まで走りながら、ワークバランスが崩れている自分を自覚していました。

ノーとは言いづらい性格のモリセイさんが、自ら招いたオーバーワークと、どう折り合っていくのか。その続きは後編で。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama