【前編】入社4年目社員の本音「マーケティング担当としてボトルのデザインだけは譲りませんでした」ジョンソン&ジョンソン・濱津薫さん(2018.06.07)

あなたの知らない若手社員のホンネ~ジョンソン&ジョンソン/濱津薫さん(27才、入社4年目)~

20代社員の仕事へのモチベーションを理解することこそ、職場で良好な関係を築くための一丁目一番地。この企画は入社3~5年の社員の話にじっくりと耳を傾け、そのマインドを紹介する。濱津薫さんは外資系企業でのマーケティングを担うチームの主要メンバーである。彼女は日々、どんな仕事をしているのか。

シリーズ第23回目はジョンソン&ジョンソン マーケティング本部 ビューティージョンソンズリード アソシエイトブランドマネジャー 濱津薫さん(27才)入社4年目。

彼女は担当する『ジョンソンボディケア』で、ホームラン級のインパクトある企画をカッ飛ばすことになるのだが。

■営業からマーケティングへ

2007年に発売された『ジョンソンボディケア』(以下・ボディケア)は、優れた保湿性プラス、情緒的なベネフィットを加味しています。香りがいい、伸びがいいと、20代の女性に人気のブランドですが。

まずはマーケティングと、なぜ外資系企業を選んだのかをお話ししますね。大学時代にマーケティングを学ぶ中で、消費材はその時代のトレンドを、最も反映していると感じました。外資系企業なら若いうちから大きな責任を担い、働ける部署に行けるチャンスがあるのではないかと思い、この会社を選びました。

最初の配属は営業でした。大手スーパーの営業担当で、リステリンやバンドエイド等のセールスをしました。

「マーケティング部門への異動を希望します」会社にはそんなメッセージを出し続けましたが、「営業で結果を出してから」と、上司には言われまして。設定した売り上げ目標は必ず達成するように計画を立て、チームで一緒に数字を追いかけることやりました。マーケティングの部署に異動になったのは、入社3年目でした。

配転当初は上がってきた数字を元に、今の市場がどうなっているのか、会社の各種のブランドの動き等のデータをA4の紙にまとめ、上司に提出する作業でしたが、「これは事実であって、分析ではない!」と、上司に何回も指摘されました。例えば市場全体がこれくらい伸びていて、ボディケアの売上げが上がっています、あるいは下がっています。それは事実ですが、それを書き連ねても意味がない。その原因は何なのかが重要で、売上げが下がっているのなら、どうすれば改善できるのか。「分析が全然なってないよ」と、上司に怒られて……。5、6回書き直したこともありましたね。

私って、仕事ができないんだ……と、数週間落ち込んだこともありました(笑)。でも、振り返るとこの経験は次のステップで活きました。

■意外と頑固な自分に気づいた

2016年にマーケティングを担当したニュートロジーナのボディケアは、保湿機能を重視した30代以上の女性向けのシリーズですが、2016年にリニューアルをしまして。このシリーズの保湿性の強みは、クリームにグリセリンを配合しているところで。以前はノルウェーの漁師の手が、なぜ荒れないのかというテレビCMを通して、それを強調しましたが。新しく知花くららさんを使ったCMは、機能性とともに気品ある女性が、しっかり保湿できるブランドですという点をアピールしました。

グリセリン配合によるニュートロジーナの優れた保湿性は、CM等で浸透していましたが、アルガンオイルを含んだ製品の発売は私がマーケティングを担当してからでした。保湿力の高いオイルでマッサージした後、グリセリン配合の保湿クリームを塗る。二つを併用することでより完璧な保湿ケアとなるという提案です。テレビCMだけではなく、雑誌等のメディアに集まっていただく機会を作り、知花くららさんに、特に乾燥を感じやすい足の保湿のシーンを演じてもらって。真面目で堅いマーケティングを実行しましたが、

「本当にユーザーは二つ使うのかな?」そんな疑問の声も、営業サイドの一部から上がりました。これまでニュートロジーナを使っていたお客様が、果たしてもう一つ買うだろうかという疑問です。

「今のお客様は、本当にいいものにお金をかけます」オイルとボディローションの二つを使うのは、今の女性のトレンドで、ニュートロジーナのユーザーは、より良い保湿効果が得られるアルガンオイルを必ず使ってくれると。そんなことを補足資料に加えたり言葉にできたのは、やはりマーケティングに配属され、上司に分析について厳しく言われたことが、役立ったのかもしれません。

ジョンソンボディケアは、マーケティングの部署に配属された2016年から担っています。その年、赤ちゃんのお肌にも使うことが出来るベビーオイルを、ボディケアの一部に配合したのですが、ユーザーにそれがしっかりと伝わる準備ができていないと、私は危惧を抱いていました。

そこでシュリンクボトルといって、ベビーオイルを配合したボディケアのボトルに、もう一枚別のベビーオイルをイメージするデザインをパッケージする、そんな販促物を提案したんです。

「ベビーオイルが入っていることをより強調するために、シュリンクボトルにしたいと言われても、発売まで時間がありません。とても無理です」。シュリンクボトルの加工等を行う部署のスタッフの声に、「ユーザーにメッセージをしっかり伝えたいんです。是非ともお願いします」という感じで、私はなんとか加工時間を早めることをお願いして。シュリンクボトルの実現は譲りませんでした。

「濱津さん、意外と頑固だねぇ」

シュリンクボトルはショップの棚に並びましたが、チームの仲間からそう言われたことを覚えています。

そうだ、私は以外と頑固なんだ、自分でも気づかなかった一面を知った出来事でもありました。

これは2016年の出来事である。2017年のボディケアのマーケティングでは、濱津さんの頑固さに裏打ちされた秘策が実現し、クリーンヒットすることになるのだが、そのお話は後編で。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama