【前編】入社3年目の本音「微妙な変化で味が変わる『ガリガリ君』開発の難しさ」赤城乳業・高橋翔平さん

■あなたの知らない若手社員のホンネ~ 赤城乳業株式会社/高橋翔平さん(25才、入社3年目)~

若手の仕事へのモチベーションを理解することは、中間管理職にとって職場での人間関係を円滑にする必須条件。20代のビジネスパーソンにとっても同世代がどんな仕事に奮闘しているか、興味のあるところだろう。バラエティーに富んだ職種を紹介してきたこの企画、今回は超ロングセラー『ガリガリ君』の製造元、赤城乳業だ。

シリーズ42回、赤城乳業株式会社 開発本部 商品開発部 研究開発チーム 高橋翔平さん(25)入社3年目。赤城乳業が1981年製造を開始した『ガリガリ君』は、実に年間4億本以上売り上げる。高橋さんは入社以来、数か月前まで、『ガリガリ君』の開発を一手に担っていた。彼は2年ほどの担当でリューアルを含め、30近い『ガリガリ君』の新製品の開発している。

開発担当は自分だけ

大学の専攻は醸造科で、日本酒やビール、醤油等の作り方を学びました。自分が作ったものを消費者に届けたい、開発の仕事がやりたいという思いから、実家に近い埼玉県深谷市に本社がある赤城乳業に、商品開発担当として入社しました。

うち商品は全てアイスで100以上の商品があります。『ガリガリ君』の製造方法は仕込みタンクの中に糖類、安定剤、酸味料、色素、香料等、種類によって果汁やミルク、乳化剤等を加え加熱攪拌して均一にし、そのあとに氷と混ぜてかき氷にする。それを別途に製造した薄いアイスキャンディーの膜の中に入れ、ガリガリ感を演出します。

年間4億本以上も出荷する商品ですから、完全に機械化されていると思っていたのですが、研修で驚いたのは、工場では原材料を人の手で、丁寧にタンク等に入れていることです。「原材料を入れるタイミングで味が微妙に変わってくる。人の手でやる方が柔軟に対応できるんだ」と、説明されました。

配属は商品開発部第一チーム、担当はガリガリ君。「一人で開発を担いますから、集中できる環境にあります」とは、入社試験の時に聞いていましたが、『ガリガリ君』の開発を担当するのは僕だけ。主に僕が提案した新製品を、社長や各本部長や上司が出席した会議で検討する。

開発に関してここまで新人に大きな役割を担わせるのは、マンネリに陥らず、常に新鮮な商品を提供したいという会社の考えからだと思います。

「高橋くん、自分が考えたことをどんどんやってみなさい」上司はそんなスタンスです。さてどんな新製品を作るか。

『ガリガリ君』のコーヒー牛乳味というのは、いいんじゃないか。それは家庭で飲んでいる身近なものという発想からでした。「コーヒー牛乳か、やってみなよ」「えっ、いいんですか!?」上司の二つ返事で、開発に取り組みました。まず、コーヒー一種類だけで作ってみましたが味が単純だ。そこで液体のコーヒーや粉のコーヒーを混合して試行錯誤の結果、3種類のコーヒーをブレンドすると、いい味が出ました。

もう一つ何かアクセントがほしい。コーヒー牛乳の原材料表記を確認したら、ココナッツが入っている。そこでココナッツの風味を混ぜてみると、美味しさが倍増したんです。ガリガリ君リッチコーヒー牛乳は、複数本入ったファミリー向けのマルチタイプとして330円で販売しました。

「コーヒー牛乳味、いいね」と、部署内でも評価されました。「美味しいじゃん、よくやったよ」なんて、開発部長にはほめられるわ、「高橋、初めてなのによく頑張ったね」と、社長には声をかけられるわ。

ひょっとしてオレは、ガリガリ君開発のために生まれてきたんじゃないか。初めての開発が高評価を得られ、そんな思いも頭をよぎりましたが、その後の開発ではいろいろなことがありました。