【後編】入社3年目社員の本音「日本人の働き方は意外と効率的です」ブルーイノベーション・マジョディ チャアベンさん(2018.06.14)

あなたの知らない若手社員のホンネ~ブルーイノベーション/マジョディ チャアベンさん(27才、入社3年目)~

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20代の部下のモチベーションを理解することは中間管理職にとって非常に重要。とは言っても、今回登場するのはチェニジア人。扱うのはドローンである。

ブルーイノベーション株式会社 システム開発部 アプリケーション開発チーム 半年間のインターンシップを含め、入社3年目のマジョディ チャアベンさん(27才)だ。彼が勤務する会社は、無人航空機の安全飛行管理システムの開発や無人航空機でのソリューション・研究開発等を業務とする。

チェニジアは北アフリカに位置する共和制国家。西にアルジェリア、南東にリビアと国境を接し、地中海に面する。2011年、中東、北アフリカで広がった「アラブの春」といわれる政変で、最初に選挙が行われた国でもある。マジョディはチェニジアの首都、チェニス出身。通訳は同僚で日本語ができるポーランド人が担ってくれた。

ネットで見つけた日本のこの会社でのインターンシップ応募。ゲームや漫画等で憧れていた日本に渡航、秋葉原に感激し日本の文化を受け入れ、日本流の時間にキチッと守る仕事の流儀にも慣れた。半年間のインターンシップが終了し帰国後、大学を卒業したチャアベンさんは日本で働くことを熱望。渡航費は会社と折半で、ブルーイノベーションの正社員として再来日を果たす。

■チェニジア人の働き方から日本人のそれに切り替わった?

「組み込み系といわれるエンジニアが、世界規模で不足しています。自動車の自動運転の方に、組み込み系エンジニアは取られてしまうんですね。ましてやドローンに興味を持つエンジニアは極端に少ない。インターンシップを経験した彼は優秀でした」(広報担当者)。

正社員になって僕が主に手がけたのは、オフィスの巡回システムのドローンです。オフィスの中をドローンが飛び、巡回することによって、社員の残業を抑制したり、夜間のセキュリティーも担います。

何事もきちんとやる日本人らしいシステムですが、僕の仕事はパソコンやスマホに、ドローンが飛ぶルートを入力し、そのルート通りに飛ばせるアプリケーションの開発です。そのアプリに反応するサーバーもドローン本体に組み込みました。将来的にドローンを物流に利用しようという構想のさきがけにもなる分野です。

数学的な計算で、アルゴニズムを導き出していくのですが、追加をアップデートしても反応がない。正しく機能するにはコンピュータプログラムの誤りや欠点、つまりバグを見つけていかなければなりません。日本人の仕事にはどの作業にも、きちんとしたマニュアルがあります。その手順に従ってステップ・バイ・ステップで作業を進めていかなければいけない。

チェニジア人はこのステップはわかっているし、重要でないと思ったら、飛ばして次に行きます。ところが日本人はわかりきっていても、丁寧にステップを一つずつ積み上げていきます。最初はなんでそんな無駄なことをするんだろうと不思議でしたが、分かりきったことでも、ステップ・バイ・ステップで根気よく積み上げた方が、バグを見つけやすい。実は日本人のやり方のほうが効率的だとわかってきました。

いつしかチェニジア人の働き方から日本人のそれに切り替わったようで、半年ほど前に一時帰国したんですが、一週間もいると日本に戻りたくなりました。

■今の給料の3、4倍は軽く稼げるが…

「私、ポルトガルに転勤になったの。一緒にポルトガルで暮らしましょう」半年ほど前、そんな誘いの言葉を、外資系企業に勤めていた日本人の彼女からもらいました。チェニジアはポルトガルと同じ地中海に面した国で、生活も習慣も文化も似ています。彼女は当然、僕が喜んでうなずいてくれるものと思っていたみたいですが、

「イヤです。僕は日本で暮らします」そう言い張り、彼女とは別れました。

僕は日本の食べ物が好きです。チェニジアの大学ではドローンがたった一台しかなかった。ところが今、憧れのドローンを何台も自分の手で、実用化できるように開発を担っています。日本でキライなのは納豆とトロロだけ。

「マジョディのようなITのエンジニアは、世界的にも少ないんだから、シリコンバレーにでも引っ越して、自動運転の車の仕事に就けば、今の給料の3、4倍は軽く稼げるじゃないか」そう言う友達は何人かいます。僕は笑顔で彼らの話を聞いている。

アメリカで暮らす気はありません。何故といって、アメリカは誰でも銃を持っている。世界中で日本ほど治安の良い国はありません。

昨年の12月の秋葉原での記者会見で、初めてデモフライトをしました。マスコミ40社の前で、室内でドローンを飛ばして。当時はまだWi-Fiの電波と混線することがあって、冷や汗ものでしたが、何とか部屋の中をあらかじめ決められたコースに沿って、飛ばすことができました。今年の10月から、ビルメンテナンスの会社がこのドローンを実用化し、契約先のオフィスで飛ばす予定です。

「ドローンを組み合わせて新たなサービスを提供する、コンサルティングとシステムのインティグレーターがうちの業務でして、警備だけでなく、今後はドローンを使ったインフラの点検や、物流等に利用することも当然、視野に入っています」(広報担当者)

僕は今、1DK家賃7万円のアパートに住んでいます。チェニジにはないスタイルですが、狭くてあまり動かずに用が足せて便利、慣れました。納豆とトロロ以外、日本のいろんなことに慣れました。

ステップ・バイ・ステップで細かいことを積み上げ、形にする日本式のやり方、違うプロジェクトに生かしていく自信があります。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama