【前編】入社5年目社員の本音「裏方として会社を支えるような仕事をしたい」日本HP穴沢佳織さん(2018.05.23)

あなたの知らない若手社員のホンネ~日本HP/穴沢佳織さん(28才、入社5年目)~

20代の仕事へのモチベーションの理解は管理職にとって、職場での良好な人間関係を築くための一丁目一番地――とは言ったもののいささか控えめな性格の穴沢さんは、外資系のこの会社ではすでに中間管理職の立場だ。今回は若い人にも興味があるであろう、中間管理職のモチベーションにも触れていく。

第22回目は株式会社日本HP セールスオペレーション本部 ダイレクトオペレーション部 穴沢佳織さん(28才)入社5年目。

■営業には向いてなかった

父親も外資系の会社に勤めていて、私も子供の頃海外生活を経験しましたので、新卒の時から外資系企業を志望しました。この会社は職種別の採用だったので、営業を志望した私は、サーバー事業本部でサーバー営業に従事しました。社会人として他企業とも関わり合いがある営業の経験は、必要かなと思ったんですが、振り返ると私は営業には不向きでしたね。

入社2年目のことでした。担当の大手通信事業者が新しいシステムを、うちの会社のサーバーを使ってやりたいと。その受注に対して、私は納期やサーバーの台数まで関わりました。「こんなスペックはどうでしょう。うちなら応じられますよ」と、営業したのですが、「わかりました。導入しましょう。1、2週間後にはほしいですね」「どのくらいサーバーが必要になりますか」「いや、数はわからない。必要に応じて随時、納めてください」と。

それまでにも、同じような仕事をこなしてきたから今回も大丈夫だろうと思い、私は納期や台数にコミットして、サプライチェーンの工場側と調整し、設置のサービスをする人との調整役も担いました。ところがカスタマイズ製品なので、1、2週間では供給が難しい。しかもギリギリにならないと先方の納期がわからない。受け入れ先の環境も整える必要がある。ケーブル等を設定し、きちんと作動させるには人の確保も必要だ。

どうしよう……逐次、上司とお客さんに報告をしていれば、別のやり方もあったのですが、私は自分の中に溜め込み、一人黙々とやるところがありまして。

「実は…納期が守れないかもしれません」

上司に報告した時には、納期が差し迫っていました。「そういう失敗は誰にでもある。責任を取るのが上司の仕事だから、そのためにももっと早く報告をしてほしい」上司には、そう諭されました。結局、連絡不足だったことを上司がお客さんに謝ってくれまして、納期にも何とか間に合わせることができました。

■3年目、会社を支えていくような仕事がしたい

この案件がきっかけというわけではないのですが、私はパッと話を振られて間髪入れずに言葉を返すことが得意ではないし、営業に不向きな自分を徐々に自覚しました。2年間営業にいて、担当の取引先も決まってきて、毎日の業務内容も同じことが多かったし。そんな時、同期の男性と話をする機会があったんです。

「そろそろ転職を考えているんだ」この会社は転職の文化があります。転職はスキルアップだったり、やりたいことをやるためだったりするわけですから、「よかったね、寂しくなるけど」同期の男性には、そう応えて。

「私、実は裏方で会社を支えていくような仕事をやりたいのよね」、同期に自分の思いを言葉にしたんです。

「それだったら、後任として僕の部署に来ないか」そんなアドバスをもらいました。

うちの会社では社内公募と呼んでいるんですが、例えば現在のポジションに24ヶ月以上、在籍している等の条件を満たし、選考プロセスに合格すれば、異動できる制度があります。彼の言葉で踏ん切りがつきました。営業から移ろうと。

そして入社3年目に異動した先が、HPのオンラインストア「HP Directplus(以下・ダイレクトプラス)のシステムを企画、改善する部署。ウェブ上のダイレクトプラスには法人や個人のお客さんがアクセスをします。パソコンで映画やゲームをより快適に見たい、ノートパソコンでタブレットとしても使えるタイプがほしい、液晶画面のサイズや重さや立体の3Dを扱いたい等々。お客さんに合った製品を検索し購入できます。例えば負荷のかかる作業に使うために、メモリーのギガ数が必要なら、それに適した製品をダイレクトプラスでオーダーすることができます。

ダイレクトプラスには社内の営業もアクセスして、法人のお客様の希望に沿ったカスタマイズ製品の見積もりを取ったりします。登録した顧客のパソコンの購入履歴の管理としても使い、オーダーされた製品のマネイジメントを司ったり。営業や製品部門や経理等、いろんなところで使われている。売上げに直結するオンラインストアという枠を超えて、ダイレクトプラスはHPという会社の基幹システムの一部となっています。

このダイレクトプラスに、さらにいろんな機能を追加する企画を考え、購入サイトとしてより使いやすく改善し、売上げを伸ばすことが私の仕事です。さて、そのためにはどのような改善点があるのか。見やすくしたり検索をしやすくしたり、購入しやすくしたりする機能には、まだまだ改善の余地があります。

何だろう、この手作業は……?

私が疑問に思ったのは、ダイレクトプラスのサイトの画面に製品を登録する際、カタログチームのメンバーがポチポチという感じの手作業で、製品のスペックを一つ一つ入力している。個人向けの各種のパソコン、ワークステーション、法人向けのノートパソコン等々、メモリーやハードディスクのサイズなどをカスタマイズしていくと製品の種類は何万通りにも及びます。それの多くを手作業で……。

ちょっと待ってほしい、これではあまりにも非効率だと私は感じたのです。

ではどうしたのか。営業として顧客と積極的に商談するよりも、裏方として貢献したいタイプの穴沢さんは、ダイレクトプラスという会社の基幹システムの一部に画期的な改善を加えることに成功していくのだが、それは後編で。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama