【後編】入社3年目社員の本音「スペシャリストの力をもつゼネラリストを目指す」ジャガー・ランドローバー・ジャパン村上篤寛さん(2018.04.09)

あなたの知らない若手社員のホンネ~ジャガー・ランドローバー・ジャパン/村上篤寛さん(29才、入社3年目)~

20代の部下との良好な人間関係を築くための第一歩は、彼ら彼女らの仕事へのモチベーションの理解。若い人も同世代がどんな仕事に汗を流しているのか。興味のあるに違いない。この企画は入社3~5年の社員の話にじっくりと耳を傾け、そのマインドを紹介する。

第17回目はジャガー・ランドローバー・ジャパン株式会社(以下・ジャガー)、ビジネスサービス部コントロール&プロフィットプランニング アナリスト村上篤寛さん(29才)。入社3年目だ。主に自動車関連の部品を供給する大手サプライヤーの社員だった村上さんは、20代後半に外資系企業のジャガーに転職、財務に関する仕事に従事している。日本企業に見切りをつけ外資に飛び込んだ彼には、終身雇用や年功序列を望む気持ちはない。

「あなたにはどこの会社に行っても、きちんと通じるファイナンシャルプランニングアナリストになってもらいたい。私はそのことしか考えていない」そんな女性の上司の言葉が印象的に心に残っているという。

■カッとくる性格が反省点…

僕の仕事は予測と実績の差異を見て、毎月、分析、報告していくことです。ある時、営業部門の先輩の女性が、不明な点を問い合わせるために僕のところに来ました。

「なんで私の把握している数字と、会計上の数字が違うのよ」彼女も仕事のできる人で、上司からの信頼も厚いし、数字にも自信を持っていた。

「精度の高い見積もりをベースに当月の費用を計上したお金と、営業部門が実際に販売施策で使った金額には、多少なりとも差異が出ますし、時差もあるんです」

「そんなこと聞いてなかったわよ」

「だから、時間軸がズレているだけで、時間を経ればあなたの持っている数字と、会計上の数字は一致するはずです。わかってくださいよ」

「それならそういう事情を、事前に説明するのが筋だと思うのよ」

僕は丁寧に説明しているつもりだったんです。しかし先輩の言い方が上から目線でものを言っているかのように、人の説明を無視しているように感じたので、こっちもカッとなってしまい、次第に言い合いになってしまった。すると上司がそばに来て。

「顔が真っ赤になっているよ。席に戻りなさい」と声をかけられまして。

「短気を起こしちゃダメよ。人と言い争うより、どうすれば人が納得し、あなたのために動いてくれるかを考えたほうがずっといい」

直属の女性上司に、そう諭されました。気をつけなくてはいけないなと。短気な性格が災いして、今後もこういう場面があるかもしれない。そんな時は一度、話をシャットアウトして、セールス部長なり上の人に話を通して、理解してもらうような大人の態度を取らなければと自分に言い聞かせました。

■将来どこを目指すのか

ちょっと古い日本企業のようですが、うちは年に一回、自由参加の社員旅行があります。河口湖とかに一泊してバーベキューを楽しんで。外資系の企業に転職して給料が上がったといっても、高級車のジャガーやランドローバーを購入できるほどの収入はない。この日だけは、会社がマーケティング活動のために所有しているジャガーとランドローバーのハンドルを握り、運転することができます。この社員旅行では社長ともフランクに、深い話をすることができるのです。43才の社長、マグナス・ハンソンはスウェーデン人と日本人のハーフでスウェーデンのサーブ社に在籍していたこともある。いろんな国でビジネスを展開してきた人です。

「どうして社長になれたのですか?」「若い頃、どんなことを思って、仕事に取り組んだんですか?」そんな質問をすると、

「キミが将来どうしたいのかによる」と。実は僕には目標があってそれを社長に告げると、「まず重要なのは自分の仕事のスキルを、キミならファイナンスの知識を伸ばしなさい。自の強みを持つ。スペシャリストの力があって、各専門のことを理解できるゼネラリストを目指していく」そんなアドバイスをもらいました。僕の目標とはーー。

ずっといるかどうかはわかりませんが、この会社に愛着心はあります。昨年の東京モーターショーでのことです。前の会社は日本の自動車部品関係の大手サプライヤーでしたから、前職の知り合いと会場で出会い、飲みに行ったんですよ。

「誰々は相変わらずガミガミうるせえよ」「あの上司、酒飲んで説教するクセは治んねえな」「給料が安いよ」等々の類の話が多かった。愚痴を言うなら、さっさと会社を辞めればいいのにと思ったんですけど。
前の会社には戻りたくないとつくづく思いましたね。この会社でやることは一つ、僕らは車の売らないと給料がもらえないという危機感で社員は動いていますから、大企業みたいにのんびりとしていられない。

「将来どうしたいのか」ハンソン社長の問いに、僕の目標は「チャンスがあれば、社長のポジションにまで行きたい」と、応えたんです。できれば50才前に理想とするポジションに付いていたい。

スペシャリストの力をもって、ゼネラリストを目指す。そしてもう一つ社長になるための重要な条件としてマグナス・ハンソンは、

「みんなとの調和を取ることが大事だ」と。

社長を目指すためには、人間的な成長も必須の条件です。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama